「会議プロセスの効率化」や「SNSでの勝ち方」などをテーマに6週にわたって放送される予定だったが、突然、第4回の放送日に番組公式Twitter(現X)が「今夜の放送は休止します」とツイート。その後も番組が放送されることはなかった。
回を追うごとに“陰謀論”のような表現が盛り込まれるなど、番組の内容が不穏なものになっていき、ついには放送が中止になるという不気味な演出で、放送のない日にもTwitterトレンドに入るほど大きな話題になった。
この前代未聞の番組を手掛けたのが、プロデューサーの大森時生。2021年に担当したバラエティ番組「Aマッソのがんばれ奥様ッソ!」(BSテレ東)で、型破りな“不気味さ”に注目が集まり、翌年に放送したフェイク・ドキュメンタリー「このテープもってないですか?」(テレビ東京)では多くのホラーファンを魅了した。
今年8月には、次世代を担う「30才未満の30人」を選出する「30 UNDER 30 JAPAN 2023」のENTERTAINMENT & SPORTS部門の受賞者に選出された。
「なんか嫌な感じがするもの」が好き
幼少期は、「どちらかというと目立たない子どもだった」という。中学受験に向けて進学塾に通い、勉強する日々を送っていた。そのころのエンタメといえば小説で、村上春樹や重松清を愛読する少年だった。小学生時代に読んで影響を受けた本として、村上春樹の『アンダーグラウンド』(講談社)を挙げる。地下鉄サリン事件の被害者やその関係者へのインタビューで構成された、ノンフィクション文学作品だ。
「加害者ではなく、事件現場に居合わせた被害者に話を聞くという着眼点が面白いなと、子どもながらに思いました。普通のサラリーマンや学生の“日常”の延長に、事件の話が描かれているんです」
”不気味なもの好き”の原点は、大学時代に観て衝撃を受けたという黒沢清監督の映画やテレビ番組「放送禁止」シリーズ(フジテレビ系)にある。ジャンプスケアのあるようなホラーではなく、「徐々に日常を侵食していくような、じわじわくる怖さが好き」という。大森はそれを、“なんか嫌な感じがするもの”と表現する。