テレ東P、大森時生が「不気味なもの」をつくる意味

大森時生 写真=帆足宗洋(AVGVST)

大きくヒットしたのは、2022年8月に放送した「このテープもってないですか?」(2022年)。保存されていない昔の番組録画テープを視聴者から募集・発掘し、その価値を再評価していく全3回のフェイク・ドキュメンタリーだ。同時期に公開された映像作家の皆口大地、寺内康太郎らによるYouTube番組「フェイクドキュメンタリー『Q』」とともに視聴されるという思わぬ相乗効果もあり、ホラーファンを中心に大きな反響を得た。そして今年5月には、冒頭の「SIX HACK」を放送した。
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「2年ほど前からホラーブームが来ていると感じていましたが、今年の頭に背筋さんの『近畿地方のある場所について』という文字コンテンツがSNSでバズっていたのを見て、ホラーと言っても特にじわじわと怖さがくる不可解で不気味な雰囲気の作品の人気が高まっているんだなと思いました」

それは、「徐々に日常を侵食していくような、じわじわくる怖さが好き」という自身の好みや、手がけてきたコンテンツの方向性とも一致した。

「僕の番組を含め、ここまで幅広い方に“怖い”コンテンツが受け入れられている現状を考えると、コロナや景気の低迷など、日本全体に蔓延るネガティブな空気感と関連している気がしています」

テレビ放送以外のマネタイズも模索

今年2月にはテレビを飛び出し、お笑い芸人・Aマッソのライブイベント「滑稽」の企画・演出を務めた。フェイク・ドキュメンタリー映像と、生で演じられるお笑い(漫才・コント)をかけ合わせ、観客をも巻き込んだ新しいエンターテインメントだ。
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「今はテレビ放送以外でもマネタイズが求められる時代。動画配信サービスに販売できるような作品性のある番組の制作はもちろん、『滑稽』のようなイベントにも挑戦していきたいです。個人的には、作家の梨さんとも話していたのですが、ジャンプスケア(大きな音などで観客を驚かせるテクニック)がないお化け屋敷をつくってみたいと思っています」

常識にとらわれず、業界の垣根をも越えて活躍する大森。今後どんな形のエンタメを見せてくれるのか、期待が集まる。


大森時生◎1995年生まれ、東京都出身。一橋大学卒業後、2019年にテレビ東京へ入社。2021年放送の『Aマッソのがんばれ奥様ッソ』でプロデューサーを担当し話題に。『Raiken Nippon Hair』で「テレビ東京若手映像グランプリ」優勝。その後『島崎和歌子の悩みにカンパイ』『このテープもってないですか?』『SIX HACK』などを手掛け、2023年にはAマッソのライブイベント『滑稽』でも企画・演出を務めた。 

*衣装:ジャケット18万4800円、シャツ8万300円(ともにピーター・ウー)

取材・文=田中友梨 写真=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=千葉 良(AVGVST) ヘアメイク=KUNIO Kataoka(AVGVST)

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