職域の感染症管理も専門とする鈴木氏に、5類感染症に移行するも、第9波の不安がささやかれる新型コロナの現在について、変異株「EG.5」にいかに備えるかを以下、ご寄稿いただいた*。
(*8月24日時点の情報に基づいている)
新型コロナウイルス感染症、流行の現況は?
2023年5月の5類感染症移行後の初めての夏が終わろうとしています。夏休みで人々の行動範囲が広がることもあり、この夏に感染が広がる要因になったと考えられます。最近ではメディアが新型コロナウイルス感染症を取り上げることが少なくなった関係で、その流行状況に対する関心が低くなりました。実際には今年の初夏から流行が始まり、現在の第9波は第8波に迫る状況になっています(グラフ1)。これまでにワクチン接種が進んできたこともあり、感染しても軽い症状で済む人が多いものの、高齢者や重い持病を抱えている人については、重症化することが懸念されます。
新たな変異株EG.5、WHOが「注目すべき変異株」に指定
WHO(世界保健機関)は2023年8月9日に、EG.5を「注目すべき変異株」に指定しました。WHOによるとEG.5は現時点で主流のXBB系統株と同様に、免疫回避能や感染力は中等度であり、重症化リスクは低いとされています。新型コロナウイルスの流行株は、XBB系統から派生したEG.5に置き換わりが進んでいます(イラスト1)。東京都保健医療局によると、都内の新規感染者におけるEG.5の割合は20%を占め、XBB.1.16の28%に次いで2番目の流行株になっています(グラフ2)。一方、CDC(疾病予防管理センター)は、EG.5が米国における新規感染者の20.6%を占めXBB系統に代わって主流となったと発表しています。
体調不良を自覚した時には
オミクロン株では従来株(武漢株やデルタ株など)に比較的多くみられた味覚障害・嗅覚障害は少なく、通常の風邪のような喉の痛みが多いと報告されています。EG.5はオミクロン株から派生していることもあり、これまでのオミクロン株に比べて症状について大きな変化はないと考えられています。症状のみで医師が新型コロナウイルス感染症と診断することは困難です。体調不良があった場合、その原因が新型コロナウイルスとは限りません。
例えば高齢者や重篤な持病がある人が発熱した場合には、新型コロナウイルス感染症以外でも診断が遅れて命に関わる病気もあります。そのため発熱や風邪症状などの体調不良を認めたら、「かかりつけ医」もしくは「最寄りの医療機関」を受診することをお勧めします。
また補助的に抗原検査キットを用いて、自分で検査をすることは可能です。ただし発症直後はウイルス量が少ないため、検査のタイミングとしては、発熱、喉の痛みなどの症状を認めてから1日程度経過後に検査を行うのが良いとされています。
ただし検査結果が陰性であっても新型コロナへの感染を完全に否定することはできないので注意が必要です。
抗原検査キット使用の際の注意事項をイラスト2にまとめました。なお、抗原検査キットの使用に関する注意事項は、厚生労働省のHPで詳しく書かれています。万が一に備えて、家庭で抗原検査キットを準備しておくと良いでしょう。