「体験の価値」を集客につなげる
新しいアイデアを思いついたのは、うどんで有名な香川県にある亡き父の故郷の丸亀市を訪れたときだった。うどん屋の店先には長い行列ができており、客の目の前で麺を茹でていた。粟田はその時の感動をきっかけに「うどんを目の前で作る体験価値で集客できる」と発案し、2000年にセルフ式うどんチェーン「丸亀製麺」を立ち上げたと述べている。丸亀製麺は、工場で生産された麺ではなく、茹でたてのうどんを提供することをモットーとしている。客は好みのトッピングを選び、主に醤油ベースのつゆと共に楽しんでいる。
チェーンの拡大に伴い、粟田は2006年、会社を東京証券取引所に上場させた。当初は新興企業向けの東証マザーズに上場したが、2年後には東証一部に昇格。その結果、トリドールはその後の事業拡大に向けた資金を得た。
海外の市場を意識したのは、ハワイでの休暇がきっかけだった。2011年にトリドールはハワイに丸亀製麺の1号店をオープンし、その後、中国、インドネシアなどにも店舗を拡大した。そして2021年には、ロンドンの1号店をオープンした。粟田は、出店する国の嗜好に合わせた味付けを徹底している。例えば、2012年にオープンした中国ではトマトベースのスープを用意し、1年後にオープンしたインドネシアでは唐辛子のトッピングを用意した。
コロナ流行中に粟田は日本全国を巡回するフードトラック(キッチンカー)で恵まれない子供たちに無料でうどんを提供し、病院では医療従事者を支援。トリドールの公式サイトでは「『食の感動』を呼び起こすものは、普段見えていたけれど気がつかなかったような、意外なところに埋もれています。私たちは、その埋もれているものを見つけ出し、新しい提供価値として、お客様の喜びにつなげていく。それが成長の大きな原動力であり、私たちの使命です」と述べている。
(forbes.com 原文)