1本目の柱は、グローバル業務全体で、水の使用量を削減することだ。データセンターの冷却も例外ではない。通常の水ではなく空気冷却技術を使用したり、雨水や再生水を利用することが行われており、気温の低いスウェーデンやフィンランドなどにあるデータセンターでは現在、公共事業から供給される淡水を使用せずに冷却を行っている。
2本目の柱は、水ストレスの高い地域で、水の補給量を消費量よりも増やすことだ。同社は2019年以降、世界中のさまざまな水補給プロジェクトに700万ドル(約10億2500万円)以上を投資し、流域の保護や農業用水の効率的利用などを支援している。
3本目の柱は、世界中の人々に安全な飲料水と衛生設備を提供することだ。2020年からは、国際的NPO「Water.org」と提携し、インド、インドネシア、メキシコ、ブラジルの人々を対象に、トイレや蛇口の設置、貯水槽の改善といった水ソリューションへの小口融資を実施している。
さらにマイクロソフトは、水と衛生の危機の解決を専門とする資産運用会社WaterEquity(ウォーターエクイティ)と暫定合意に達し、水と気候レジリエンスに関連したファンド「Water and Climate Resilience Fund」への投資家第1号となった。最終文書が作成された時点での出資となる。
同ファンドが専門とするのは、自治体が低所得層向けに構築する気候変動に強い「水と衛生」インフラへの投資だ。対象地域は南アジア、東南アジア、サハラ砂漠以南アフリカ、南アメリカとなっている。
ロバーツによれば、4本目の柱は、水の供給とアクセスに関する、国内外の政策議論に参加すること。5本目の柱は、水セクターにおけるイノベーション促進支援だ。
水消費について検討している企業が重視すべきは、世界のどこで事業を展開し、どのくらいの水を消費しているかを確認することだと、ロバーツは話す。
「次のステップとして欠かせないのが目標の設定だ。ウォーターポジティブ実現を目指してもいいし、水の使用量削減目標を別に設けてもいい」とロバーツは筆者に語った。「目標設定によって、行動が促される。また、企業は説明責任を負うとともに、経営陣も自ら取り組み、目標に向けて先頭に立つチームを支援するようになる」