サンベルトの魅力
資産運用の分野では依然ニューヨークがトップに君臨しているが、金融部門ではフロリダ州とテキサス州で雇用が全米のどこよりも急速に拡大している。ブルッキングス研究所の暫定所長で都市政策の専門家であるエイミー・リューは、「サンベルトは変化し続けている。もはや石油やガスといった従来型産業に頼る地域ではなく、観光業に特化した地域でもなく、定年退職後の生活環境を売りにする地域でもない」と述べた。
企業にとっては、不動産、人件費、税金がニューヨーク市内と比べて格段に安い。シャーロット、ナッシュビル、ダラス、パームビーチなど新天地に拠点を構えることで、より幅広い人材募集が可能になる。テクノロジーの進歩によって、取引所の立会場に物理的に縛られることはなくなった。特定の顧客層の生活圏近くに拠点を移せば、それらの層にサービスを提供する企業力も向上する。
雇用される側にとっても、テキサス州やフロリダ州のように気候が温暖で生活費が安く、人口が密集しておらず、個人に州所得税がかからない地域はたしかに魅力的だ。
ニューヨークはどうなるか
ウォール街の企業がニューヨークから撤退すれば、同市やニューヨーク州に深刻な影響が広がる恐れがある。トーマス・ディナポリ州会計監査官の報告書によると、2022年の金融機関からの州税収は54億ドル(約7900億円)で、個人所得税徴収額の24%を占めた。企業の撤退傾向が続けば、ニューヨーク市とニューヨーク州はさらに数十億ドルの税収を失いかねない。ウォール街から企業が消えれば、市内の地域経済エコシステムも損なわれる。地元のレストラン、バー、ジム、クラブ、ネイルサロン、理髪店や美容院、小売店、ブロードウエーのショーやイベント会場に日々出入りする高給取りの金融関係者が減るのだ。
その結果、自治体のサービスは削減を余儀なくされる。つまり、警察官、消防士、ごみ収集作業員、公共交通機関の職員、看護師、教師の雇用は減り、人員削減が加速するだろう。
(forbes.com 原文)