「モーメントマーケティング」成功の鍵
8月2日に米ハインツの公式インスタグラムが投稿した画像には、「トマトケチャップ」をもじった「トマト“ケン”チャップ」と、「オリジナルバーベキュー（ソース）」をもじった「オリジナル“バービー”キュー」と書かれたピンク色のボトルが2つ。いずれも、バービーの横顔のシルエットも描かれている。投稿に「このドリームチームを実現すべきだと思うかい？」とあるように、実際に発売されたわけではない。しかし、コメント欄には実現を求めるコメントが多数書き込まれており、また各メディアで取り上げられたり、リンクトインで言及されたりと、注目を集めている。
一方で、画像の下部には、着せ替え人形バービーを販売する米マテル社の許諾を取っていることが明記されている。おそらく長い時間をかけて準備を進め、マテル社とも密な連携を取りつつ、実現した投稿だと想像される。
このケースは「モーメントマーケティング」と呼ばれるものだ。モーメントマーケティングとは、トレンドとなっているニュースやイベントなどを念頭に置いたプロモーション手法のこと。SNSなどのプラットフォーム上でブランドがタイミング良く取り組むことで、ブランドの認知度向上や売上アップに貢献するものだ。
タイミングとセンス、パートナーとの連携、炎上リスクのコントロールが必要で、極めて繊細な作業にはなるが、その分成功した時の効果は絶大である。
今回のケースでは、映画『バービー』や玩具としての「バービー」にもポジティブな影響があったことは間違いない。
ハインツは2022年、ハロウィーンの時期に真っ黒な「ブラックガーリックマヨ」を発表している。ハロウィーン仕様の3種類のパッケージが用意され、こちらもSNSを中心に話題を集めた。ハインツは、年間の、場合によっては数年分のイベントカレンダーを用意していると想像される。
ハインツの取り組みは、いずれも機敏な対応に見えるが、実は周到な準備によって実現しているものだ。モーメントマーケティング成功の秘訣は、ここにある。
