意外に少ない姉妹都市のつながり
「ハワイの産業経済開発観光局(DBEDT)が補助金を出してくれましたが、スポンサーによってはハワイ日米協会に出す予算はもう決まっていて、それを削って姉妹都市サミットに資金提供してくれた会社もありましたから、協会内部でも議論がありました。結果として、ハワイではなく日本の「タオ・エンジニアリング」という会社が大口のスポンサーになってくれて助かりました。この会社は福島県いわき市の会社で、偶然ですがいわき市もカウアイ郡と姉妹都市になっていて、うまく収まった感じです」
今回のサミットの最大の成果が何だったかと言えば、姉妹都市同士の横のつながりができたことという。前述したように三輪氏がオンラインではなく対面開催にこだわったのも、この点だ。
実は、日本の姉妹都市の中には「契約は締結したものの何をすれば良いかわからない」と実質的に何の交流もできていないという都市も少なくない。それが今回、姉妹都市同士の「横のつながり」ができたことで新たな「化学反応」も起きた。
活発に交流をしている自治体から話を聞いたり、ハワイに物産を輸出している例に触れたりするなかで、こんな新たな交流の仕方もあるのかと発見した自治体も多かった。また、これからは担当者同士でもっと交流しようと名刺交換した人も少なくなかったという。
「ハワイ州と姉妹都市の6自治体が集まった際には、広島、山口、愛媛、福岡は近いからハワイから観光客を招くツアーパッケージがつくれないかと具体的なプランも議論されました。サミット開催中から『次はいつ開催するのか』と聞かれることが多く、横のつながりがこんなに大切だったのかとハワイ側も再認識することになりました」
広島県の湯崎英彦知事は、ハワイ側の代表とステージで英語でのトークセッションを披露したり、沖縄県の玉城デニー知事は在ホノルル日本国総領事公邸での歓迎晩餐会で率先して沖縄舞踊のカチャーシーを披露したり、各自治体のトップが率先して活躍する姿も、今回のサミットでは目立った。参加者が開放的なムードで交流できたのは、ハワイという土地の空気感があったからに違いない。
北海道や広島県、山口県は、ハワイの地元の道人会、県人会と交流し、マウイ島、カウアイ島、ハワイ島の各島でも、それぞれに交流イベントが開催された。今回のサミットの成果を三輪氏は次のように締めくくる。
「学生を引き連れて、地元の学校と今後の相互交流を話し合った自治体もありました。サミットというきっかけがあれば、後は自然発生的に交流が生まれていく。これこそがサミットの意義だったと思います。その意味では、今回の成果は私の想像をはるかに超えたものでしたよ」
今後も、2年おきか3年おきかはわからないが、姉妹都市が交流できる場はつくっていくつもりだと三輪氏は言う。「もっとも、そのときにはハワイ側のスタッフも拡充しないとね」と笑うが、手探り状態から手づくりで実現した姉妹都市サミット。日本とハワイとの絆の強さをあらためて実感させてくれるイベントになったことは間違いない。