音楽

2023.09.06 13:00

音楽の冒険家、ピアニスト上原ひろみが誘う「ワンダーランド」

写真=樋口勇一郎

筆者の目には『One Minute Portrait』がコロナ禍の中でリモートツールを駆使した、上原の実験的なプロジェクトのようにも映った。だが上原によると、これはいつもの楽曲制作のプロセスから大きく変わらないことの実践なのだという。
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「私はいつも作曲する時には、最初に1人でテーマやリズム、ベースライン、グルーヴなど曲をつくるためにモチーフを揃えます。ワン・ミニットのプロジェクトからも、曲をつくるための“とっかかり”になるおもしろいモチーフが生まれました。あとはそのモチーフに加えてコード進行などを決めたものを、共演するアーティストに渡してメロディを弾いてもらったり、即興演奏をしてもらうパートを伝えて1分間のポートレートになりました」

ロールプレイングゲームのような出会いと旅立ち

気鋭のアーティストを迎えて完成したアルバムに寄せる思いを上原に聞いた。

「私がこのプロジェクトで思い描いてきたサウンドを具現化してくれる仲間をずっと探し続けて、ようやく出会えたバンドメンバーといっしょにつくりあげた大切な作品です。アドリアン、ジーンそしてアダムは私のイメージに寄り添ってくれ、やがてそれを超えるサウンドを残してくれました」

アルバムのリリースに先駆けて、タイトル曲『ソニックワンダーランド』の公式ミュージックビデオもYouTubeの公式チャンネルに公開された。横スクロールのロールプレイングゲームのようなとてもコミカルな映像だ。自身もファミコン世代であるという上原は、このミュージックビデオにもあるメッセージを込めたという。
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「プロジェクトのメンバーを探してまわり、集まったミュージシャンたちとツアーに出てライブをするという『音楽の旅』がアルバム制作の一連の過程にとてもよく似ていて、ロールプレイングゲームっぽいというか。そういうコンセプトを映像に表現していただきました」

9曲目の『ボーナス・ステージ』もまたファミコン風の音源から始まる。上原が「いいことしか起こらない、ボーナス・ステージのイメージを描いて創った楽曲」により締めくくられるアルバムは、全体がとても優しくポジティブな雰囲気に包まれている。だから何度も繰り返し聴きたくなる。
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編集=安井克至

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