総費用約5億ユーロ(約790億円)の「コメット・インターセプター」ミッションには、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)とエストニアのタルトゥ天文台が参加。最重要課題は、最初期の太陽系を形成した原材料物質の特性を遠隔探査で明らかにすることだ。探査機の打ち上げは2029年に予定されている。
ESAによると、ミッションは同じロケットに搭載されて一緒に打ち上げられる3機の探査機で構成される。これらの探査機が、対象の彗星の周囲で多角的な観点から同時に観測を実施し、太陽に初めて近づく長周期彗星の3次元モデルを作成する予定だ。
このミッションがユニークな理由
タルトゥ天文台の惑星科学者、ミケル・パユサルは自身の研究室で取材に応じ、これまでの接近観測の対象となった彗星は大きく変質しているため、彗星に関して何か明確なことを言うのは困難だと語った。ESAによると、今回のミッションの狙いは、太陽系の黎明(れいめい)期からそのままの状態で残っている物質を含む彗星を調査することだ。
太陽とその近くを通過する彗星が繰り広げる光のショーは天文ファンを魅了しているが、宇宙生物学の分野では、太陽系の進化過程を理解するために、太陽系初期の原始惑星系円盤の構成物質と分布を明らかにする必要がある。
この目標達成に向けて極めて重要な役割を果たしているのが、エストニア・タルトゥ天文台の惑星科学者チームだ。チームは、総開発費約500万ユーロ(約7億9000万円)の「光学ペリスコープ(潜望鏡)彗星撮像器(OPIC)」を製作している。OPICを使えば、対象の彗星の核から放出されるガスの特性などを解明できる。
以前の彗星ミッションでは、太陽の近くを何回か通過したことのある彗星が探査対象だった。パユサルによると、こうした彗星では、表面物質の多くが失われており、彗星が形成された当初の姿は跡形もなくなっているという。