欧州の主要な都市ではほぼどこでも、この手術を受けることができる。だが、活況を呈するこの産業の中心地は、間違いなくイスタンブールだろう。
医療ツーリズムの人気が高まるトルコでは、形成外科や歯科医療、その他の処置を目的として訪れる外国人が増加している。保健省は、2023年に医療ツーリズムで入国する外国人は約200万人にのぼると予想。観光収入は、およそ200億ドル(約2兆9000億円)に達すると見込んでいる。
トルコを訪れる外国人に特に人気があるのは、自毛植毛だ。1日あたり2000件以上の手術が行われているという。他国に比べて圧倒的な低料金で手術を受けることができるため、「ヘア・ツーリズム」は大きなビジネスになっている。
観光情報を提供するIstanBeautiful(イスタンビューティフル)の創業者、アリ・チャグラヤンはGQ誌に対し、「トルコ保健省はこの人気を、医療ツーリズムを成長させるチャンスと捉えている」と話している。「医療機器やデジタルマーケティング、さらには患者に提供されるホテルの宿泊料まで、税額控除や還付の対象としている」という。
そして、それらの措置は功を奏している。医療ツーリズムでトルコを訪れる人は、年間150万~200万人にのぼり、その多くが植毛手術を受けている。
日本や中国にも人気が拡大
植毛のためにトルコを訪れる外国人を増やしているのは、リラ安と同国の医療技術だ。Nikkei Asiaによると、イスタンブールでの植毛手術の費用は、日本のおよそ6分の1、韓国の2分の1程度。手術費用の安さと、国際的な評価の高まりが、中国人と日本人の利用増加にもつながっているという。また、多くの著名人、例えば有名なサッカー選手などがトルコで移植手術を受けていることも、同国の人気を後押ししているとされる。2022年11月には、イタリアの元スター選手、フランチェスコ・トッティがイスタンブールの形成外科病院に投資。そこではドイツやスペイン、イタリアなどのリーグに所属する多くの選手たちが、手術を受けている。