音楽

2023.08.28 11:30

「踊れる音楽」を日本でやることに意味がある。Kroiがもたらす革命

ライブは“気持ち”と連動した瞬間芸術

「あとKroiは常に失敗に寛容。失敗を失敗と思わずに活動していると、結果的に、真面目にやっているだけでは生まれない瞬間や音が生まれる。それが好きですね」(千葉)

「我々は偶然の美を大切にしています。“寛容”をベースにした上で、いろんな意見をごちゃ混ぜにしていくと自分たちでも想像していなかった偶然の発見が出てくるから」(益田)

「ライブでも、演奏しながら『今日のこいつはこういうテンションだな』と感じながらアプローチを変えます。ライブとはそのときの気持ちに合わせてやる瞬間芸術だと思っているので、その日限りのものをやりたいし、生楽器同士でやっている臨場感を見せられたらいいなと思っています」(長谷部)

長谷部が言う通り、7月に初出演した「ミュージックステーション」(テレビ朝日系)でも大型ロックフェスでも、Kroiは音源通りにプレイするのではなく、曲中にアドリブやセッションを取り入れていた。

歴史を受け継ぎ、次の世代へつなぐ

ロックやブラックミュージックの歴史と数々のレジェンドたちの顔が浮かび上がってくるような演奏に、フレッシュなメロディやキレのいいラップを乗せていくKroiからは、「温故知新」の思想が見えてくる。

「ルーツを大事にするのは楽しいから、という純粋な気持ちが一番かもしれないですね。単純に音楽が好きだから自分たちが影響を受けた音楽をみんなにも知ってほしい。その上で、その人たちがやってきた音楽を進化させて、歴史の一部を紡いでみたいという夢があります」(内田)

「かつて新しいものや面白いものを作ってきた人たちはみんなもれなく、その時代よりも前のものをリスペクトして、それらを吸収した上で、新しいものを作っていると思う」(千葉)
 衣装提供:FUMITO GANRYU / DAIRIKU / YUICHI TOYAMA(Eye's Press) /OWDEN(Eye's Press)

そしてKroiは次の世代へつなぐことにも意識的だ。今は自国の音楽に触れるのと同じ感覚で、タイムリーに海外の音楽を聴くことができる時代だが、内田は「これからますます自分の国の音楽を一番聴くということが当たり前ではなくなってくる」と見据えている。

そんな未来に、日本にいる実力ある次世代ミュージシャンたちが世界で活動しやすくなるように、Kroiは道を切り開こうとしているのだ。

「洋楽を聴いているとコンプレックスを感じることもあるし、日本で音楽をやっている自分がちっぽけに感じる時もある。それをなるべく解消して、みんなが健康的に表現できる世の中にしたい。そのために世界へ挑戦していきたいですね」(内田)

「『日本』や『アジア』として区別されるのではなく、世界のスタンダードとして自分たちの音楽が聴かれるようになりたい。そのためにはこれからもいい音楽を発表して、いいライブをすることを、貪欲に突き詰めていきたいです」(関)

文=矢島由佳子 編集=田中友梨 撮影=帆足宗洋(AVGVST) スタイリング=菅原 稔 ヘアメイク=上野知香

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