だが公式発表があった今、別の疑問が浮かんでくる。この製品はなぜ存在するのか。そして、なぜそのために200ドル(日本での価格は2万9980円)も支払わなければいけないのか──。
PlayStation Portalはリモートプレイ専用機であり、それ以上の機能はない。自宅のWi-Fi経由でPS5と接続し、PS5からスクリーンにゲームをストリーミングする。できるのは基本的にそれだけだ。
注目すべきは、以下の「できないこと」だ。
・Bluetooth非対応なので、ワイヤレスヘッドセットを使うには新たな技術「PlayStation Link」対応のヘッドセットを購入する必要がある
・ネット接続を通さないローカルプレイはできない(メディアのダウンロードや再生も不可)
・ゲームのクラウドストリーミングはできず、できるのはWi-Fi経由でのPS5からのストリーミングのみ
ソニーは、PlayStation Portalの唯一の利用シーンとみられるものを次のように説明している。「PlayStation Portalは、家族がテレビを使用していてゲームが遊べないときや、PS5のゲームをリビング以外の別の部屋で遊びたいといったユースケースにぴったりのデバイスです」
つまり、これはNintendo Switchのようなゲーム機だが、使うには400ドル以上(日本では5万円以上)するPS5をすでに所有している必要がある。単体ではゲームは動かせず、クラウドゲームのストリーミングもできない。
家族とテレビの奪い合いになっている人が、(値段もSwitchとほぼ同じの)PlayStation Portalを1台買えば、PS5をリモートでプレイできるというのが売りなのだろう。ただし、同じPS5を2人が同時に使い、それぞれ違うゲームをプレイすることはできない。
重宝する人がまったくいないかと言われれば、おそらくいるだろう。だが、PlayStation Portalは、Switchから好評な部分をすべて取り去ったもののように思える。Switchというよりかは、任天堂の史上最大級の失敗作である「Wii U GamePad」を思い起こさせるものだ。
まあ、それでもかまわないのかもしれない。害はないのだから。ただ、ソニーが機能をこれだけに絞ったハードウエアを追求する価値があると考えた理由が、まったくわからない。
今回発表された一連の製品で、これより興味をそそるのは、プレーナーマグネティックドライバーを内蔵したワイヤレスヘッドセットとワイヤレスイヤホンだ。PlayStation Portal(あるいは通常のPS5)と組み合わせて使用できるもので、これなら200ドルの価値があるかもしれない。(イヤホンの方の価格は実際、200ドル=2万9980円だ)
PlayStation Portalは年内に発売予定。
(forbes.com 原文)