研究チームによると、気候変動を憂慮しつつも未来に希望を持つことも気候変動関連の行動につながるが、一方で罪悪感や恥、悲しみ、恐怖といった感情は行動を減らす要因になるという。
研究結果をまとめた論文は、学術誌PLOS Global Public Healthに掲載された。研究チームは、英国に住む16~24歳の539人を対象に、オンラインでアンケート調査を実施。気候変動に関する精神的苦痛の有無や、自身の精神衛生状態、新型コロナウイルスの流行が始まる前に環境保護や気候変動に関する活動に参加していたかを聞いた。参加者の61%近くが女性、68.1%が白人、15.8%がアジア系で、78.8%が都市部または準都市部に住んでいた。
研究チームは「若者は気候変動によって不釣り合いな負担を強いられている。例えば、現在の政策では、2020年生まれの人は1960年生まれの人に比べて、異常気象、特に熱波を経験する可能性が2~7倍高くなる」と指摘。
「若者が、自分の声を届けたり、抑制・適応のための行動に参加したりする機会が少ないという事実(例えば、選挙権年齢に達していなかったり、国内の環境保護策に対する決定権がなかったりする場合)は、不安や苦痛をさらに悪化させる可能性があります」と述べている。
調査の結果、気候変動について高いレベルの精神的苦痛を訴えた人は10.1%のみだった。低レベルの苦痛は約37%、中程度の苦痛は53.2%だった。
中程度の精神的苦痛を申告した参加者の大半は、社会経済的な地位が比較的高く、精神衛生上の問題が少なくとも1つあった。一方、苦痛レベルが高かった人の割合は、女性やノンバイナリー(男女の枠にとらわれない性自認)など男性以外の性別で多かった。
興味深いことに、気候変動に関する精神的苦痛のレベルが高い人ほど、気候変動関連の活動に参加することで充実感や精神衛生上のメリットを得られる可能性が高いことが示された。
研究チームは「気候変動に関する精神的苦痛は、主観的に肯定的な側面と否定的な側面の両方が組み合わさった多次元的な経験とみられる」と説明。「これらの知見は、怒りが気候危機への関与、特に集団行動における重要な原動力であることを示したこれまでの研究結果と一致している。人は(恐怖や悲しみではなく)怒りを覚えると、行動の機会を見出し、決意と勇気をもって行動する可能性が高まる」と述べている。
(forbes.com 原文)