ヒートアイランド現象は、都市部は熱がこもりやすく、特に建物などが密集していて閉ざされた地上空間ではそれが顕著になるという現象だ。
都市部の居住者は、昼夜を問わず、農村部より気温が高い状況で生活しなくてはならないことが多いわけだ。
現在問われているのは、都市部の暑さをどうやって和らげることができるかということだ。暑さは、健康にも気候にも好ましくないため、なおのこと緩和しなくてはならない。
総合エンジニアリング企業Arup(アラップ)が発表した最新研究論文の著者たちによると、都市部の気温を押し上げている大きな要因は都市デザインだ。
アラップの最新研究では、宇宙から撮影された衛星画像と人工知能(AI)を用いてマッピングを行い、世界6都市の中心部で、最も暑さが厳しい地点(ホットスポット)を特定した(6都市とは、具体的にはエジプトのカイロ、英国のロンドン、米国のロサンゼルスとニューヨーク、スペインのマドリード、インドのムンバイ)。
各都市で2022年に最高気温を記録した日の地区別気温差を確認するために、デジタル分析ツールが使われた。
研究論文の共同著者らは、都市行政のリーダーや、都市計画・デザインに携わる関係者に向けて、自らが実施する都市デザインの力で、暑さの厳しい地点の気温を引き下げるにはどうすればいいのか、その方法について理解を深めてほしいと呼びかけている。特に気にかけるべきは、経済的に最も恵まれない地域だという。
アラップでネイチャーポジティブ・デザイン(生態系の損失を食い止め回復させることを目指すデザイン)の取り組みを率いるディーマ・ゾガイブによると、多くの主要都市は「意図せず」暑くなるようデザインされている。
「人類はこれまで都市部の自然をどんどん排除し、道や広場、広々としたスペースをコンクリートで固めてきた。しかし、都市部の気温を下げるには自然が重要な役割を果たすことが、研究で次々と明らかになっている」とゾガイブは述べる。
ゾガイブによると、木々の樹冠が覆って日陰になる範囲を拡大させるなど、自然を利用した解決策を取り入れれば気温が下がりやすくなる。また、車道や歩道に透過性舗装(多孔質のコンクリートで雨水を地中に通しやすい舗装)を採用するのも効果的だ。