ニュース記事生成するAI「Genesis」をGoogleがニューヨーク・タイムズに売り込み
今年7月、Googleがニュース記事を生成するAIを開発中だと報じられ、話題になった。第一報をもたらしたニューヨーク・タイムズによると、GoogleはこのAIを同社だけでなく、ワシントン・ポスト、ニューズ・コーポレーション(ウォール・ストリート・ジャーナルやタイムズの親会社)など複数社に売り込んでいたという。このAIは「Genesis」という開発名で呼ばれており、現在進行形で起きている出来事やその関連情報を取り込み、ニュース記事を生成することができるという。つまり「Genesis」が実用化されてAIアシスタントのような役目を果たせば、情報収集のような単純なタスクが自動化されるので、各メディアの記者は時間をもっと有効活用できるようになるというわけだ。
かたやGoogleから「Genesis」を売り込まれた大手紙の幹部は、ニューヨーク・タイムズの取材に対し、「Genesis」は「不安を与えるツール」であり、「正確で手の込んだニュース記事を作成するために費やした努力を軽視しているようだ」と匿名を条件に答えた。すると、GoogleはTwitterで声明を発表。同社の目標は「GmailやGoogleドキュメントなどと同じように、記者の仕事を支援するツールを提供すること」であり、「Genesis」には記事の見出し候補や文体を提案する機能があるものの、「生身の記者の代わりに取材や事実確認をすることは意図していない」と述べた。
CNET、独自開発の生成AIが作った金融関連の記事77本を配信
いわば Googleが火消しを図った格好だが、生成AIの普及によってホワイトカラーの知的労働者が職を失うのではないかと危惧する声はかねてから上がっていた。イギリスのガーディアンはGoogleの「Genesis」に関連して、大手会計事務所KPMGやOECD(経済協力開発機構)の調査を引用しつつ、「ライター、翻訳者のタスクの43%はAIで代替可能」であり、「法律、医療、金融といった専門職の雇用がAIによって失われるおそれがある」と報じた。
また、生成AIが作り出す記事の品質や正確性については、まだまだ懸念すべき点が多い。Googleの「Genesis」に絡めて、TechCrunchはCNETの不祥事を例示している。
CNETは昨年11月から、独自開発の生成AIが出力した金融関連の記事77本を配信していた。ところが今年1月、そのうち半数以上の41本に誤りがあったことが発覚し、後から「スタッフライターが大幅に書き直した」旨を書き添える羽目になったのである。