AP通信はOpenAIと提携、過去記事提供
一方、AP通信は今年7月、ChatGPTの開発元であるOpenAIと提携を結んだ。アメリカの新興ニュースサイト、アクシオスによると両者の提携期間は2年。
OpenAIはその期間内、ChatGPTの基盤となるLLM(大規模言語モデル)を鍛え上げるために、AP通信が保有する過去記事を1985年までさかのぼって利用することができる。AP通信はその見返りとしてOpenAIの技術と専門知識を活用できるわけだ。
すでにAP通信は2014年から企業の決算記事をAIで自動配信しており、その技術をスポーツイベントの結果配信にも応用している。しかし今年8月に入ると、AP通信のスタンダード&インクルージョン担当副社長であるアマンダ・バレット氏が同社の公式ブログを通じ、「事実を収集、評価し、記事をまとめ上げるという記者の中心的な役割は変わらない。AIが記者に取って代わる存在になるとは決して考えていない」という声明を発表した。
OpenAIはニューヨーク・タイムズからも過去記事の使用許諾契約を得ようとしていたが、NPR(アメリカ公共ラジオ放送)によると協議は物別れに終わり、ニューヨーク・タイムズがOpenAIを提訴する方向で検討していることが分かった。今後も生成AIの取り扱いをめぐり、マスメディアとハイテク企業との間でさまざまな思惑が交錯しそうだ。
水科哲哉(みずしな・てつや)◎日・英・韓の3カ国語を解するライター/編集者。ビジネス書、自己啓発書から、政治や歴史関連本、科学書に至るまで、60点以上の多岐にわたる翻訳書の編集制作に従事。『DIAMONDハーバード・ビジネス・レビュー』『Forbes JAPAN』などの記事翻訳にも携わる。音楽ライターとしても活動中。アンフィニジャパン・プロジェクト代表社員。Twitter @Tmizushina