音楽

2023.08.26 17:00

「ボディポジティブ」を掲げた歌手がセクハラで提訴。ポジティブ思考の罠とは

Lizzo "The Special Tour 2023" (Sydney) / Getty Images

人の心の傷はなかなか癒えない。自分の中にある呪縛が“刃”として他者に向けられると、今回のリゾのようなことになってしまいかねないのだと、つくづく思う一件だった。同時に、自らを満たし自分の存在を認められる独自の方法を、小さくても良いから人それぞれが知っていることが、巡り巡って他者に寛容になれる手段であることも実感した。

「まぁこの自分も悪くない」と思えること

リゾは、アメリカで昨今巻き起こっているキャンセルカルチャーにより、あらゆる仕事をキャンセルされてしまうだろう。実際、リゾが出演することになっていた「Philadelphia’s ‘Made in America’ music festival」の開催を主催者がキャンセルした
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これが社会の姿勢。シビアである。ボディポジティブを始めとしたダイバーシティが、本当の意味で自然な形で社会に根付くようになるまでに、人類にはまだまだ経なくてはならない過程がたくさんあるようだ。何事も、その問題を乗り越えて良き方に向かうためには、相当な努力が必要になってくる。

ボディポジティブを始めとした自分のあり方・捉え方において大事なのは、自分のことを好きになるまではいかなくても、自分を「まぁこの自分も悪くない」と思えること。そして、その具体的なポイントが何であるかを、それぞれが自己の中で認識し把握しておくことだ。これは世の中の在り方云々とは別に。

なぜなら、世の中でボディポジティブが定着したとして、世間が「あなたはそのままでいい」と言ったとしても、自分自身がその状態の自分自身を認められないのでは本末転倒だから。一方で世間の見た目に関する受け取り方や受け入れ態勢が広くなればなるほど、自分の居心地の良い地点を見つけやすくなるということだ。
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体型をはじめとした外見に関する自身の気持ちという内面と“世間”。この世界に生きている限りそれは車の両輪だ。トライアンドエラーしながらも、その良きバランスが取れる日に近づいていっていると信じたい。

文=日野江都子

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