子どもを持つことができなかった34歳の女性が、いつか子どもを産むことができるようにとの希望で、姉の子宮を移植した。
この女性は、子宮が未発達になるI型MRKH(メイヤー・ロキタンスキー・キュスター・ハウザー)症候群だったのだ。なお彼女の姉(40歳)は、子宮を提供する前にすでに2人の子どもを産んでいた。
この手術は、約18時間を要する2つの手術が組み合わさったものだった。
匿名希望のこの女性は、今年後半に胚移植を受ける予定で、最終的に妊娠に至る希望を持っている。
この子宮移植は今年初めに行われたが、英国時間8月22日に『British Journal of Obstetrics and Gynaecology』(英国産科婦人科学会誌)に掲載された症例報告で初めて公にされた。
子宮移植は比較的稀であり、数カ国でしか実施されていない。世界中で約100件の移植が行われており、そのうち少なくとも49人が出産に至っている。米国では、2016年から2021年の間に33人の女性が子宮移植を受けた。
しかし、手術にはリスクと合併症の可能性がともなう。また受領者は、重大な副作用を引き起こす可能性のある拒絶反応を防ぐ薬を服用する必要がある。
この最新のケースでは、受領者は2回以内の妊娠で提供者の子宮を摘出する予定になっている。これまでには、提供された子宮を予定より早く摘出しなければならなかった女性もいる。
手術はオックスフォード大学病院の移植外科医イサベル・キローガ博士と、子宮移植を支援する慈善団体「英国子宮移植協会」の会長でもあるインペリアルカレッジ病院ロンドンの産婦人科医リチャード・スミス教授によって主導された。
チームは15件の移植を実施する許可を得ているが、1件あたり約2万5000ポンド(約463万円)かかる手術を行うための資金を必要としている。
医師たちは、今回行われる初めての手術が多くの女性に子宮を提供する道を開くことを望んでいる。いつかは、他の健康上の理由で子宮を摘出する必要があった多くの女性が恩恵を受けるかもしれない。
移植は、特定の婦人科がんを持つ女性の生殖能力を保護するための手法の開発に結びついた、英国における約25年間の研究の成果をもとに行われた。
スミス教授はBBCニュースに対して、この手術が「大きな成功」であったと語り「提供者(姉)も受領者(妹)も大変喜んでいます」と述べた。
彼は、この手術を可能にしてくれた英国子宮移植協会と受領者の姉に感謝の意を示しながら、次のように声明で述べた。「まだ初期段階ですが、順調に進むことを願っています。そして、受領者が数年以内に赤ちゃんを持つことができる状態になることを期待しています」
彼はさらなる移植を行うことを同僚とともに希望しているが、これはさらなる資金の確保と提供者の確保に依存すると述べている。
「近い将来、子宮がないあるいは未発達な状態で生まれた他の女性たちを助けることができるようになることを強く望んでいます」と彼は語った。
キローガ博士は、移植を行えたことは「特別なもの」だったと語った。「手術は長く複雑なものでしたが、計画どおりに進み、提供者と受領者が順調に回復していることをうれしく思います。
この手術がより一般的になり、より多くの女性が自分の赤ちゃんを産む機会を持てるようになる時を楽しみにしています」
(forbes.com 原文)