6月に全米小売業協会 (NRF))が発表した調査(対象:米国の消費者5031人)によると、53%の消費者が、パンデミックの発生以降に自分の住む地域の小売店舗での犯罪が増加したと回答しました。米ディスカウントストアのTargetも、万引きなどのロスによる2023年の収益への影響が、前年比で5億ドル以上増える見込みであると発表しました。
こういった傾向は世界各地でも見られます。英国国家統計局によると、イギリスでは2022年9月までの1年間に万引きが前年比で22%増えました。シンガポールでは、同年の万引きが前年から23%増加、香港では、2023年の最初の2カ月間の万引き件数が前年同期比35%増でした。
万引きが増えた理由は?
万引きが増えた原因は、諸説あります。インフレ、生活費の高騰、エコバッグの普及、マスク着用の常態化、バーコード型セルフレジの普及など。そして二次流通市場の拡大、闇バイトやソーシャルメディアでの万引き手口の共有など、これらすべてが一翼を担ってることは間違いありません。
中には万引きという"ハイ"な状態にハマり、自分では止められなくなっている人もおり、英国のAddiction Treatment Group (依存症治療グループ)は、万引き中毒の助けを求める人が“天文学的”に増加しているとコメントしています。
NRFの調査によると、米国では38%の小売店舗は従業員に万引き犯を捕まえることを許可していません。その理由は、万引きに関連して店舗が訴訟の対象になりやすいからであるという見方もあります。これも、万引きが減らない一因です。
また、警察でも万引き犯を追求することにかかる「労力」は常に議論の的になっています。英Daily mail紙によると、元警察官でSecurity Industry Federationの会長、Daniel Garnham氏は「警察は200ポンド未満の商品を盗む万引き犯を優先順位が低いとみなし、逮捕しない」と話しています。
そして、商品のロスに関わるコストは販売価格にも影響を与えるため、米国土安全保障省捜査局(HSI)は、組織的な犯罪の影響により、アメリカの平均的な家庭では年間500ドル以上の追加費用を支払うことになると推計しています。
日本での万引きは減っている?
では日本の状況はどうでしょうか。警察庁の統計によると、万引き認知件数は、2020年が8万7278件、2021年が8万6237件、2022年が8万3598件と減少傾向にあります。一方で、レジ袋が有料化された2020年に実施された、全国のスーパーマーケット300社を対象とした調査では、31%の企業がマイバックの普及により万引きが増加したと回答しました。また66%の企業は、在庫管理における万引きや盗難被害の影響をほとんど把握できていない、と回答しました。
昨今では普及したセルフレジでの「スキャン漏れ」も難しい問題です。これは意図的にスキャンしなかった場合は万引きに該当するでしょうが、消費者が偶然スキャン漏れに気が付かないケースもあります。