なぜ洗剤がよく盗まれるのか
最後に、万引きや盗難問題の構造を理解するには、何がよく盗まれているのかを知ることがヒントになります。NRFの調査によると、一番多い盗難品カテゴリはデザイナーズブランドの洋服。これは想像しやすいですが、二番目に多かったのは意外なことに洗濯用洗剤でした。
例えば、米国で代表的な洗剤ブランドのTide。一流ブランドであり、誰もが必要とする商品でありながら、価格も高いため、重くてかさばるにもかかわらず格好のターゲットになるそうです。
小売価格は20ドル程度ですが、路上やオンライン市場では5〜10ドルで売られていることから、犯罪グループがマネタイズするターゲットは、日用品を必要とする普通の消費者だと言えるでしょう。
米国土安全保障省のRaul Aguilarは、「組織的な小売犯罪の阻止に本当に貢献するには、消費者が『解決策の一部』となる必要がある」と言います。「消費者が最初にできることは、オンラインで購入する商品に注意を払うこと。大幅な値引きをして新品として販売されている商品に対して懐疑的になるように」とアドバイスしています。
先に、「家庭の負担が年間500ドル以上増える」という話を引用しましたが、安いものを市場で購入したとしても、「出自」が分からないものを買うと、巡り巡って結局は消費者がその費用を負担するおそれがあるのです。
「なぜこの商品は安いのか」。買い物の際にいちいち自分に問いかけることは容易ではありません。しかしコミュニティを守るためには、そこに思いを馳せることが必要な社会になりつつあるのかもしれません。
【参考】
・NRF: Most consumers think retail crime is up
https://chainstoreage.com/nrf-most-consumers-think-retail-crime
・めざまし8 2022年10月18日【▽セルフレジ急増し万引き増加】
https://www.bilibili.com/video/BV1mv4y1S7Ed/
・エコバッグにマスク姿の「不審者」だらけ…万引きGメンを悩ますレジ袋有料化の"副作用"
https://president.jp/articles/-/51576?page=3
加藤順也◎Avery Dennison Smartrac Japan マネージングディレクター。LVMHグループ、Kurt Salmon US を経て2011年にAvery Dennisonに入社、2019年4月から現職。小売業や消費財メーカーへのコンサルティングやソリューション開発が専門。Avery Dennisonにおいて、マーケット開拓やRFID導入プロジェクトをリードし、日本支社の成長を牽引。上智大学卒。UCバークレーHaasビジネススクール DLAP修了。