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2023.08.31 17:30

世界中で増える万引き、よく盗まれるのは「洗剤」? 打つ手はあるか

海外企業の驚きの万引き対策

万引きが増えている海外の各社は、どのような対策を取っているのでしょうか?

米化粧品チェーンのUlta Beautyは、2023年末までには70%の店舗でフレグランスを鍵付きキャビネットに陳列し、いくつかの店舗では武装した警備員も配置しています。

この状況を、COOのKecia Steelmanは「フルコートプレス状態(バスケットボールで相手ゴール近辺からでもしつこくプレスをかける戦術)」と表現していますが、買い物客にとっては歓迎すべき対策ではなく、来店よりもむしろオンラインでの購入を促進しているように映るかもしれません。

また、英スポーツ量販店のSports Directは、万引き犯を特定するための顔認識カメラを店舗に導入しました。カメラは入店者全員の顔をスキャンし、商品を盗んだ人だけでなく、「合理的に疑われる」人物の画像を監視リストにアップロードできるというものです。

「要注意人物」の画像は他の店舗と共有することができ、容疑者が再び犯罪を犯さない限り、1年間保存されます。企業は「スタッフの安全を確保し、窃盗を防止するため」と言いますが、運動家からは「(監視社会を描いたGeorge Orwellにちなんで)オーウェル的である」という批判を受けています

万引き対策で最も難しいことは、そもそも「盗まれたのかどうか」と、それが「何であるか」というロスに関する情報を確実に特定することです。

「ロス」とは、帳簿上の在庫数よりも実際の商品数が少なくなることを指しますが、万引き以外にも、レジスタッフのスキャン漏れ、入荷時、店舗間移動時もしくは廃棄時のスキャンミス、従業員や関係者による盗難、取引先の誤納品など、小売業では原因が特定できないロスが多いからです。

その点、大手米百貨店の取り組みは参考になります。RFIDタグを一つひとつの商品につけ、出口で「ユニークID」を電波で読み取り、販売データと照らし合わせることで「その商品は販売済みなのか」を識別しています。

同社の役員は、「空港で使われるTSA(運輸保安庁)のシステムを店舗の出口に導入するようなもので、どのような商品が私たちの建物から出ていくのかを、かなりの信頼性をもって理解できるようになった」と述べています。

同社がこの技術を導入したのは2016年のことでしたが、導入後すぐに、商品を盗んでいる従業員(中には20年以上勤務し、調査対象になったことがない従業員もいる)でさえも特定できたそうです。さらに、ある店舗から商品を盗み、別の店舗で返品して返金やストアクレジットを受けようとする返品詐欺の特定にも活用しています。
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文=加藤順也

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