誰もが反対した事業、生まれたムーブメント
2023年1月、PoliPoliはあるプロジェクトの開始を告げる新聞広告を出した。Reach Out Projectと銘打たれた企画。協力者にはビル&メリンダ・ゲイツ財団、フェイスブック共同創業者ダスティン・モスコヴィッツらのOpen Philanthropy財団など、世界的な財団が名を連ねる。この企画は、新しい社会変革のプレイヤー「ルールメイカー」を育成する。社会の利益のため、「社会を動かすルールづくり」にその過程から参加し、グローバルな課題に挑む次世代のルールメイカーを資金から政策提言まで支援する。起業家の育成ならほかにもふさわしい主催者はいるが、ルールメイカーとなればPoliPoliのほかにはいない。同社が開発するのは政治・行政との政策共創プラットフォーム「PoliPoli」等。政策への声を集め、届けるサービス。GovTechと呼ばれる、国内唯一無二の事業。それは同時に、誰にも理解されないことを意味した。
「この事業で起業することに、ほぼ全員に反対されました。絶対、成功しないと」
19歳の慶應大学生にして、俳句アプリを毎日新聞に売却した若き起業家が、次なるテーマに政治を選んだことに、周りは困惑した。実際、事業の難易度は高かった。政策を変えるには、政策決定に直結する議員によるサービスの利用が必須。ただ、それだけではマネタイズが難しい。
「議員、政党、官僚、民間の有識者という政策にかかわる方に、とにかく使っていただく。地道に取り組んだ4年間でした」
その努力は実を結ぶ。PoliPoli発のムーブメントが政策を変え始めた。代表例は「生理の貧困」。サービス上で可視化された、生理に関する政策リクエストと賛同の声に、議員が反応。PoliPoliユーザーとの参議院会館での意見交換会から、大臣質問、国会論戦に発展。報道も連鎖した。「5人に1人が経済的理由で生理用品の入手に苦労した経験あり」という実状が認知され、支援が必要な人に生理用品を無料配布する政府予算が計上された。
22年3月に自民党、4月に経産省へと導入されたPoliPoli。3つの国政政党、5つの中央省庁、全国の自治体で導入が進む。PoliPoliでの自治体への意見募集には、中央省庁で平均4000件、都道府県で平均800件の声が集まる。法人向けのルールメイキング事業も、支援先が増加中。累計資金調達額も数億円規模に達した。