初期は大手スーパーが導入したが、最近では地方の商圏や中小小売事業者からの問い合わせが増加している。2022年末には近畿、北陸、東海に展開する総合スーパー平和堂が、今年4月には山口県を中心に広島県、島根県、福岡県にスーパーを展開する丸久がネットスーパーを始め、ステイラーの導入店舗数は約500。
ネットスーパーの歴史は1990年代から始まった
ネットスーパーの歴史は1990年代、インターネット産業の急成長に沸くアメリカからはじまった。しかし、これまで順風満帆に成長を続けてきたわけではない。10Xの代表取締役社長を務める矢本真丈はこう話す。「ネットスーパーはアメリカの『ウェブバン』が第1号。Amazonと同時期に創業し、上場時には市場からかなり大規模な資金調達もしていました。ところが、そんな企業がたった数年で倒産してしまったんです。それが歴史のはじまりです」
1996年にサービスを開始したウェブバンは、インターネットの活用や物流センターを構築したものの、ドットコムバブルが弾けた2001年には倒産を余儀なくされた。ネットスーパーの草分け的存在の没落が連鎖するかのように、アメリカを追随した日本でも撤退が相次いだ。
ユニクロを傘下に持つファーストリテイリングは、2002年9月に「SKIP」というブランド名で青果通信販売に参入したものの、わずか1年半で事業解散。住友商事も2008年12月から子会社で「サミットネットスーパー」を展開していたが、2014年10月に撤退している。
「当時は巨大倉庫に在庫を保管して、そこから商品を集めて梱包し、発送するという、センター出荷型が主流でした。しかしそのモデルでは、すべての会社が失敗した」と矢本。多くの場合は配送コストがかさんで黒字化のめどが立たず、ことごとく撤退を迫られた。これがネットスーパーの第一世代だ。
コロナ禍で顧客単価上昇
その後に登場したのが、小売事業者が自店舗から商品を出荷する、店舗出荷型。注文を受けた商品を店頭在庫からピッキングして店舗周辺の注文者宅まで配送する方式で、中国のEC大手アリババ・グループの「フーマー」が代表例だ。10Xが展開するStailerも、店舗出荷型の立ち上げ・成長の支援がメイン事業。ところが、第二世代に当たる店舗出荷型も「当時はどこも黒字化するほどはうまくいかず、成功例は生まれていなかった」(矢本)といい、苦境は長く続いた。その理由は、トイレットペーパーや水など粗利が低い商品の購入が多かったからだ。加えて、当時のネットスーパーのサイトは表示速度も遅く、例えば検索窓にトマトと入力すると画面にリンゴが表示されるなど、お世辞にも使い勝手がいいとは言えない代物だったという。