そして8月23日にはインドの「チャンドラヤーン3」が月面着陸を試み、世界ではじめて月南極への軟着陸に成功。同国は旧ソ、米国、中国に続いて「月面への着陸に成功した4番目の国」となった。さらに同月26日にはJAXAの小型着陸機「SLIM」が打ち上げられ、米民間企業による着陸機は2023年中に2機、2024年にはさらに5機が予定されている。
いま月への挑戦は加熱状態にある。各国各社はなぜいま月面を目指すのか? そこにはどんな経済効果が目されているのか?
月の「水からなる氷」
米国主導のアルテミス計画における有人月面探査は2025年に実施予定(NASA)月の地中には、水の氷があることがわかっている。この氷こそが月開拓によって経済効果を生み出すキーアイテムとなる。
手順としてはまず、太陽電池パネルとドリルを月面に送り込む。電動ドリルで月面を掘削し、氷を採取すれば、水が得られる。さらにその水を電気分解すれば、酸素と水素が生成できる。
水と酸素はクルーの糧となるが、それだけではない。酸素をマイナス183度以下、水素をマイナス253度以下まで冷却すれば、液体酸素と液体水素が得られ、この2液はそのままロケットの推進剤として活用できる。つまり、月面で氷が採取できればロケット燃料を現地調達することができ、輸送機は片道分の燃料を搭載するだけでよいことになる。
また、トヨタが開発中の有人月面ローバー「ルナクルーザー」も、液体水素と液体酸素で動く。月面は赤道付近では夜間にマイナス170度、局地のクレーター内であればマイナス250度まで温度が下がるため、極低温燃料の現地生産は実現可能だと考えられている。