2024年に始まる氷の掘削作業
月着陸機「グリフィン」に搭載されたNASAの月探査ローバー「バイパー」。2024年に月南極に向け打ち上げられる(Astrobotic)水の氷は、月の極地に多く埋蔵されている。そのため各国各社はいま、月の南極を目指している。
NASAは2024年11月、「バイパー」を月南極に送り込む。この無人ローバーは氷の所在をマッピングしながら、掘削ドリルで氷のサンプルを採取する予定。その開発運用コストをNASAは4億3350万ドル(476億8500万円、1USドル/110円換算、2021年時点)と算出している。
また、同ローバーの輸送には月着陸機「グリフィン」が使用される。この機体は米民間企業アストロボティック社によって開発運用されるが、NASAはその開発協力費と輸送料として同社に1億9950万ドル(211億4700万円、1USドル/106円換算、2020年時点)を提供している。
オバマ元大統領によって施行された宇宙政策以降、米国の宇宙開発の大部分は在米民間企業に委託されている。月面への物資輸送を民間に委託するこの「商業月面輸送サービス(Commercial Lunar Payload Services、CLPS)」もその一環であり、現状では4社による8便が契約済み。今後さらに増便される見通しだ。NASAは2018年からの10年間でこのCLPSに総額26億ドル(2860億円、1USドル/110円換算、2018年時点)を費やす。
ちなみに先日、月面着陸に失敗したロシアの「ルナ25」の予算は、推定約2億ドル(280億円/140円換算)とされ、単体のプロジェクトとしては高額といえる。これは同プロジェクトが1990年代後半に計画されたもので、ロシアの経済状況の悪化にともない、計画自体が長期化した結果だろう。
一方、インドの「チャンドラヤーン3」の推定予算は7460万ドル(約104億4400万円/140ドル換算)であり、超格安と言える。これは2019年に月面着陸に失敗した2号機のシステムを踏襲しているためと思われる。
そしてJAXAの「SLIM」の総開発費は当初180億円が見込まれていたが、X線分光撮像衛星「XRISM」と相乗りで打ち上げるなどの工夫により、149億円まで抑え込まれる予定だ。ただし、JAXAの2023年度の年間予算が1554億円であることを鑑みれば、そのウェイトは軽くない。