経済・社会

2023.08.27 07:00

お互いの体を縛り付けた日米韓、定例化の幻想

韓国の尹錫悦大統領(左)、日本の岸田文雄首相(右)と3カ国記者会見を行うジョー・バイデン米国大統領(Photo by Kyle Mazza/Anadolu Agency via Getty Images)

日米韓3カ国の首脳が18日(米国東部時間)、米ワシントン郊外のキャンプ・デービッドで会談を行った。バイデン米大統領、岸田文雄首相、尹錫悦韓国大統領の首脳3人は、日米韓首脳会談や3カ国高官協議の定例化などで合意した。関係者の1人はこの会談の意義について「何があっても3カ国がバラバラにならないようにする態勢を固めたかった」と語る。

この会談の実現に向けて鼻息が荒かったのが米国だ。バイデン大統領がキャンプ・デービッドに外国首脳を招いたのは今回が初めてだ。日米両政府の間では「名誉なことだ」という声が上がった。米側は日韓両政府の陪席者について、3カ国首脳会談では5人前後、会食の席では2人だけに絞ると通告してきた。首脳同士の親密ぶりを演出し、突っ込んだ議論を期待したのだろう。おかげで、日本と韓国は、本来課長クラスが担当するノートテーカーを、局長や通訳に任せる羽目になり大いに苦労したようだ。

会談の前にはエマニュエル駐日米国大使が3カ国会談の意義などをメディアに繰り返し、説明した。エマニュエル氏はオバマ政権で大統領首席補佐官を務めた。日米韓協力の強化はオバマ政権の悲願だった。ところが、韓国の朴槿恵政権時代の前半期や文在寅政権時代に日韓関係が極度に悪化した。おかげで2022年6月に日米韓首脳会談を開くまで、4年9カ月の空白期を生んだ。オバマ政権時代からの悲願を達成し、来秋の米大統領選に向けてバイデン政権の外交成果としてアピールしたい思惑がのぞく。

では、今回の会談で合意した、日米韓がしっかりとスクラムを維持するための様々な仕掛けは成功するのだろうか。

外務省元幹部は、首脳会談の定例化について「一番手っ取り早く出せる成果」とする一方、「合意がどこまで続くかの保証はない」と語る。その典型が日中韓首脳会談だ。「関係が難しいときほど、会って話をする」という意気込みで2008年に始まった。事務局まで作ったのに、3カ国の関係が悪化すると度々中断。2019年12月を最後に開かれていない。現在、中国が3カ国首脳会談の開催を水面下で打診し始めたようだが、これも日米韓の結束に危機感を覚えた中国の政治的な都合によるものだ。
次ページ > 一番慌てないのは米国なのかもしれない

文=牧野愛博

ForbesBrandVoice

人気記事