だが、フランスを代表するセーヌ川でのオリンピック競技の実施は大会組織委員会にとって難題だ。1990年に当時のパリ市長だったジャック・シラクが約束したように、パリ市は30年以上にわたって「泳げるセーヌ川」にしようとしてきたが、実現できていない。
先週、パリ五輪に向けたトライアスロンのテスト大会がセーヌ川で開催された。8月17、18日の女子と男子のトライアスロンは予定どおり実施。だが19日には「水から高レベルの大腸菌が検出された」とフランスのAFP通信が報じ、その結果、パラトライアスロン競技は中止され、20日に開催される予定だった混合リレーも中止となった。
また、フランス水泳連盟によると、8月初めにはオープンウォータースイミングのテスト大会も水質が基準を下回ったため中止された。
フランスはセーヌ川の浄化プロジェクトにすでに14億ユーロ(約2230億円)を投資している。五輪の競泳を実施するにはこのプロジェクトの成功が不可欠だ。組織委は「プランBはない」と述べている。だがそれだけではない。浄化により、中世以来、水浴びやレクリエーションなどパリ住民の生活を支えてきたセーヌ川を市民に開放することになる。
「トライアスロンとオープンウォータースイミングは来年、セーヌ川で開催される。開催場所を移すという案はない」と組織委のトニー・エスタンゲ会長は語っている。
浄化プロジェクトでは、処理できるよう雨水を地下の巨大な水槽に貯める。パリでは大雨が降ると下水道があふれ、汚水が川に流れ込む。汚水の流れ込みを防ぐという点で、多額を投じたこのプロジェクトはすでに一定の成果を上げている。
2028年の夏季オリンピックが開催されるロサンゼルスの水道・衛生局職員はパリを訪れ、セーヌ川浄化の取り組みを視察している。
1900年に初めてパリでオリンピックが開催されたとき、200m自由形と200m障害がセーヌ川で行われた。8年後のロンドン大会では競泳会場はプールに移された。
(foorbes.com 原文)