今回取り上げるのは、社会課題を解決する優れた小中学生のアイデアを集う「スタートアップジュニアアワード2022」で堂々たるプレゼンを披露し、文部科学大臣賞を受賞した田島ちひろ。現在、中学1年生(当時は小学6年生)の12歳だ 。
同アワードで田島は、デジタルデバイスを使うことで、子どもたちに近視が増加している問題を取り上げた。解決策として、パソコンモニターから30cm以内に近づくと超音波センサーが察知して音を鳴らす見守り人形「ミエ」と、指定の時間になると3分間音楽を鳴らし、目を休めることを提案する「エル」を発表した。
他にも多くの物作りに取り組んでいる田島だが、「幸せになるために創作をしている」と話す。彼女の創作の原動力に迫る。
幸せと物作りはつながっている
まずは彼女の物作りの制作過程をみていこう。工程はこうだ。まず解決したい課題を見つけたら、5分間のブレインストーミングでいくつものアイデアを書き起こす。そこから使えそうなものをピックアップし、実際の使用場面やイメージを深掘りしていくのだ。「アイデアを形にした後、いくつかのプロトタイプを作ります。ミエとエルは、これまでに3体ほど作り、改良を重ねてきました」
ミエとエルはどちらもパソコンの画面上部に取り付けて使用する。チャームポイントは、ボタンや毛糸でできた髪の毛で、とぼけた表情がユニークだ。田島がフェルトで手づくりしたが、最初に作った人形は大きすぎてパソコンに装着することが難しく、耐久性の低さが課題だったと言う。それらを一つずつ改善していった。
彼女の物作りには、どんな思いが込められているのか。
「今の私は十分幸せです。だけど、もっと幸せを感じるためには、身近な人を幸せにする必要があると考えました。なぜなら、私が幸せを感じる瞬間は自分も家族も健康で、みんながハッピーでいる時だから。そこで、彼らが困っていることを解決する物作りをしているんです」
ミエとエルを作ったきっかけも、4歳違いの妹の視力が、ちひろと同じように悪くなることが心配だったからだ。
画像認識AIで忘れ物チェック
彼女が作る作品には、家族の小さな困りごとを解決する発明品が多い。その一つが「bugs bingo!」。ビンゴに描かれた虫を見つけたら、印をつける。虫が苦手な田島自身と4歳違いの妹のための作品だ。「嫌いなものも、その人を構成する一部。虫はつい目に飛び込んできちゃうけど、見つけた時にちょっとだけ嬉しくなる仕掛けを作れば、ハッピーになるんじゃないかと思ったんです」
妹は遊びの延長として、物作りの実験によく参加してくれるという。だから最近は、妹の困りごとを解決する作品が多い。彼女が妹のために作った作品はこのほかに、画像認識AIを使って忘れ物チェックができる「〜1日を楽しく過ごすための〜 忘れ物チェックプログラム」がある。
ルール設定から自作した2人用ボードゲーム「Hoi」も彼女にとって大切な作品だ。ルールは、色違いの妖精から王様を決め、王様がバレないよう相手の妖精を取ること。「Hoi」はボードゲームマーケットで3000円の価格で販売し、これまでに3セットが売れたという。