食&酒

2023.08.26 12:30

留学生と居酒屋メニュー、都内に広がる「ガチネパ」と「ガチ中華」の共通点

最近、都内に増えているのは、中国一辛いといわれる湖南料理の店。代表料理は魚の頭を発酵トウガラシで蒸した剁椒魚頭(ドゥオジャオユィトウ)

前回のコラムでは、ネパールのカトマンズなど現地で実際に食べられている料理を「ガチネパ」として紹介した。東京でもこの「ガチネパ」を供する店は現れている。

「ガチネパ」に詳しく、前回、筆者をこのような料理店に案内してくれた、インド・ネパール料理専門家の小林真樹さんと、最近よく情報交換している。

というのも、小林さんが東京のインド料理やネパール料理店を訪ねるようになったきっかけが、筆者がこれまで訪ね歩いてきた「ガチ中華」との関係と似ていたこともあり、そのことに共感を覚えるからだ。

小林さんも筆者も、若い頃はよくアジアを旅していた。その後、小林さんは海外だけでなく、「国内インド食旅」にも目を向けるようになったという。インドやネパールへの旅の代用として、それらの国の料理が食べられる日本国内の店を訪れたのだ。

最初は現地で食べたそれらの料理が懐かしく足を伸ばしていたというのだが、やがてそれ自体が目的化し、現実のインドやネパールへの旅以上に面白く感じられるようになり、足繁く通うようになったのだという。

そうしているうちに店のオーナーや料理人と顔なじみとなり、「(彼らが)どの地方の出身で、どんな料理があるのか」「どのような食材が本国から輸入され、どんな風に調理されていくのか」を詳しく聞き出すようになっていった。そして小林さんは「日本に在住しているからこそ浮き彫りにされる彼らの食事情に関心が向かった」という。
池袋の中華フードコート「友誼食府」のスタッフ。左から沈凱さん(上海出身)、張勤さん(遼寧省瀋陽出身)、ヨンラワーさん(マレーシア出身)、汪春軍さん(吉林省長春出身)、王警誼さん(四川省成都出身)

池袋の中華フードコート「友誼食府」のスタッフ。左から沈凱さん(上海出身)、張勤さん(遼寧省瀋陽出身)、ヨンラワーさん(マレーシア出身)、汪春軍さん(吉林省長春出身)、王警誼さん(四川省成都出身)

ガチネパとガチ中華の共通点は留学生

実は筆者も、コロナ禍で海外渡航がままならなくなったために、国内の「ガチ中華」の世界で、小林さんと同じようなことをやっていたのである。

これまではなかった中国の多様な地方料理が突如として日本に出現したことが、ガチ中華の世界に関心を深めるきっかけだったため、訪ねた店のオーナーや調理人に必ず出身地などを聞いていたのだ。

その意味では、小林さんは筆者にとってはこの道の先達のような存在で、同じような動機で異国の食が提供される場所をうろついていた者同士のシンパシーを感じるのだ。

そんな小林さんに最近レクチャーしてもらっているのが、前回のコラムでも触れた「ガチネパ」がどのように日本で生まれ、現在どんな料理となっているのかということなのだが、これは「ガチ中華」の成り立ちなどとも共通点が多い。
2010年にオープンしたガチネパ料理の店「MOMO」の出現以降、大久保周辺のネパール人街化が進んだという

2010年にオープンしたガチネパ料理の店「MOMO」の出現以降、大久保周辺のネパール人街化が進んだという


それはまず留学生の存在だ。小林さんの著書である「日本のインド・ネパール料理店」(阿佐ヶ谷書院)には、次のようなことが述べられている。
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写真=中村正人、和田宣弘、東京ディープチャイナ研究会

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