日本政府観光局(JNTO)が8月16日に発表した7月の海外からの訪日客数は232万600人となり、前年同月の約16倍に達した。海外での新型コロナウイルスの感染拡大が本格化する前の2019年7月と比べても、同78%の水準まで回復している。
コロナ禍前には全体の3割を占めていた中国からの訪日客が、同国政府による日本への団体旅行制限の影響で激減。中国を除けば同年7月との比較で同3%増と、コロナ禍前の水準を上回る勢いだ。
インバウンド拡大の恩恵を受ける業界の1つが、百貨店だ。「三越伊勢丹ホールディングス」の2023年4月から6月のインバウンド売上高は、前年同期比2%増。東京にある伊勢丹新宿本店、三越日本橋本店、三越銀座店の3店舗の同期免税売上高も、前年同期の約3.6倍に膨らんだ。「インバウンド売上高の伸び率が6月以降、急上昇しており、2024年3月期通期の計画(2019年3月期比20%減)を上回る順調な推移」(同社)という。
三越伊勢丹ホールディングスは8月3日に開催した決算説明会で、インバウンド関連の質問に対し、「従来の爆買いではなく、高額商品を販売員から提案を受けながら買うスタイルに変化している」などと答えている。「爆買い」といえば、中国人旅行客の消費行動を象徴する言葉として用いられてきた。同社の説明からもインバウンドの「主役」が交代している状況がうかがえる。
もっとも、8月10日には中国政府が中国人の日本への団体旅行解禁に踏み切った。足元の外国為替市場での円安進行も訪日客にとっては追い風。日本の株式市場では「インバウンドが年末に向けての有望なテーマ」との見方が勢いを増す。