しかし、ベルリンを拠点とするソフトウェア開発者トラヴィス・ブラウンが、この膨大なフォロワー数の信憑性に疑問を投げかけている。ブラウンが抽出したデータによって、マスクのフォロワーの中に数百万もの「非活動的なアカウント」があることが明るみに出たのだ。
フォロワーの4分の1が「デフォルトプロフィール画像」を使用
この物語は今年3月、イーロン・マスクがバラク・オバマ前大統領をも抜き去り、「Xで最もフォローされている個人」の称号を獲得したことから始まった。ブラウンが綿密に集計・分析したデータは、マスクのフォロワーのかなりの部分が「幻想」である可能性を示唆している。ブラウンの調査範囲では、マスクをフォローしている1億5320万9283のXアカウントのうち、なんと42%が自身のプロフィールのフォロワーがゼロであった。さらに、これらのアカウントの72%が10人未満のフォロワーを示していた。マスクのフォロワーのかなりの部分が明らかに不活発であることから、このフォロワーの真の性質について疑問が投げかけられたものだ。
数字的な統計にとどまらず、フォロワーの性質も眉唾ものだ。自動化されたボットアカウントや非活動的なユーザーを指し示す典型的な特徴が見て取れたのだ。たとえばフォロワーの約4分の1、3800万人以上は、Xが提供するデフォルトのプロフィール画像を利用していた。
さらに、5000万人近くのフォロワーのユーザーネームは数字の羅列だった。
興味深いことに、ブラウンはマスクのフォロワーのうち1350万のアカウントが、イーロン・マスク(@ElonMusk)のアカウント「のみ」をフォローしていることも指摘している。この奇妙な事実は、調査に新たなレイヤーを追加し、これらのフォロワーの確からしさをさらに深く精査する必要を示していそうだ。
アカウントの作成時期も疑惑の根拠
ブラウンの分析は、アカウントの作成時期についても掘り下げている。マスクの現在のフォロワーのうち3890万人以上が、2022年10月27日の、マスクによるツイッター買収後にアカウントを開設していることが明らかになったのだ。なぜこのタイミングで新しいアカウントをこんなに大勢が作ったのかと、なぜ、ここまで短いスパンでフォロワーが急速に増えたかについての疑問はぬぐえない。イーロン・マスクが、以前はツイッター・ブルーとして知られていたXプレミアムに投資したことは、世界からXプレミアムが大きな支持を集めることにつながると予想された。しかし、ブラウンが収集したデータは異なる姿を描いている。マスクのフォロワーのうち、このプレミアム購読を選択したのは、予想に反してわずか0.3%という極少数だったのだ。
トラヴィス・ブラウンが提示したデータと観察結果は、マスクのフォロワーが本物でないことを決定的に証明するものではないが、疑念を抱かせるものであることは否定できない。統計、特徴、タイミングが複雑に絡み合っていることから、この巨大なフォロワーの性質についてはさらなる調査が必要だろう。
私たちのコミュニケーションや認知する事実をテクノロジーが形成するようになった今、そして将来、錯覚から本物を見分けることはこれまで以上に複雑で重要な課題となる。
(この記事は、英国のテクノロジー特化メディア「Wonderfulengineering.com」から翻訳転載したものである)