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2023.08.23 15:00

国に納めたつもりの10%、実は事業者に? インボイス制度導入と消費税

脇田弥輝税理士事務所代表 脇田弥輝氏

脇田弥輝税理士事務所代表 脇田弥輝氏

2023年10月1日より、消費税に関する制度「インボイス制度」が導入される。「インボイス(適格請求書)」とはそもそも何か? われわれの暮らしにはどう影響するのか? 従来の免税事業者は、インボイス発行事業者になり、消費税を納めるべきなのか?

脇田弥輝税理士事務所代表 脇田弥輝氏に以下、ご寄稿いただいた。


そもそも「インボイス」とはなに?

インボイスとは、領収書やレシート、請求書など、お金を受取った側(お店など)がお客様に発行するものです。これまでの領収書等と何が違うのかというと、「記載されている消費税をあとできちんと国に納めます」というものであるということ。

実は、これまでは、お客様から消費税をもらってもそれを国に納めなくてもいい「免税事業者」も普通に領収書等に消費税を載せていました。本来、消費税は国に納めるもので、お店の利益にするのはおかしいのですが、年間の売上1000万円以下の事業者は「消費税の計算も大変だし、そんなに大きな金額でもないから、消費税をもらっていいよ」ということになっていたのです。


インボイスは「もらった消費税を国に納めますよ」というものですから、当然、免税事業者は発行できません。消費税を納める事業者(=課税事業者)だけが発行することができます。

インボイスには、登録番号(T+13桁の番号)と、税率ごとに合計した消費税額・税率が記載されていて、「消費税をいくらもらったのか」がはっきりわかるようになっています。

課税事業者はインボイスをもらえないと、「消費税分値上げ」されたことになってしまう

あなたが一般の消費者であれば、もらったレシートがインボイスだろうと普通のレシートだろうと困りません。「自分が払った消費税がこのお店の利益になるのか……」という多少の不満はあるかもしれませんが、消費税を10%払うことに変わりはないからです。日本で買い物をしたら10%消費税がかかる、これは仕方のないことです。

でもあなたが事業者で、消費税を納める「課税事業者」の場合、インボイスをもらえないと困ることが起こります。事業者は、お客様からもらった消費税と、経費を払うときに払った消費税を差し引いて、差額を納めます。払った消費税は、それを「もらった側」が納めるので、差し引けるのです。

ところが、インボイス制度が始まると、インボイスをもらえないと、払った消費税を差し引くことができなくなります。もらった側が納めないので、その代わりに自分が被ることになります。

つまり、経費を払ったときにインボイスをもらえれば、払った消費税分、損はしませんが、経費を払ったときに普通の領収書等をもらうと、払った消費税分、損をしてしまいます。実質10%の値上げとなってしまうわけです(図では、税抜300円のはずが330円となる)。

とはいえ、いきなり10%の消費税分、値上げになるわけではなく、インボイス制度導入後、一定期間は経過措置があります(3年間は約2%、その後の3年間は約5%の実質値上げとなる)。
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文=脇田弥輝 編集=石井節子

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