進まぬインボイス登録 中小企業は約4割で取引への影響を懸念

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インボイス(適格請求書)制度が、あと約1カ月後の10月1日から始まる。当初は、10月1日から制度開始するためには3月31日までに「適格請求書発行事業者」として登録する必要があったが、制度開始前までに登録すればいいことになり、だいぶゆるくなったことから、まだまだ浸透していないことが伺えた。

このインボイス制度、簡単に言えば一定の要件を満たした適格請求書を売り手が買い手に発行し、それを双方が保存すれば消費税の仕入れ税控除を適用する、というもの。この適格請求書を発行できるのは適格請求書発行事業者のみのため、10月1日から控除を受けるためには、前日まで登録しなければならないということになる。

そんなインボイス制度について、7月に中小企業を対象とした調査をエヌエヌ生命保険が行なっている。それによると、インボイス制度についてどの程度知っているのか問うたところ、「概要を知っている」が43.8%でトップ、「名前は聞いたことがある」が27.2%、「具体的な内容まで知っている」が23.9%となっており、まだあまり理解するまで至っていないようだ。

ただ、インボイスを発行するための適格請求書発行事業者として登録しているのは41.4%で、「制度開始までには登録予定」が11.1%となっており、約半数は10月1日から適格請求書発行事業者になるようだ。しかし、「登録する予定はない」と24.7%が回答しており、全体の1/4に上る。

「登録している」と回答した業種でいちばん多いのが「出版・印刷関連産業」で69.1%。次いで「製造業(医薬品・化粧品)」が66.7%、「卸売・小売業(自動車・輸送機器・金属加工・精密機械)」が65.4%となっている。一方、「登録する予定はない」と回答したのは「病院・医療機関・福祉業」で54.0%ともっとも多く、「教育関連業」が47.8%、「飲食店」が36.4%と続いている。


適格請求書発行事業者へ登録した理由としては「登録した方がメリットが大きいと思うから」が42.5%ともっとも多く、次いで「取引を打ち切られる可能性があるから」が33.4%、「新規の取引を敬遠される可能性があるから」が26.8%と、取引への影響を懸念していることが伺える。

一方で登録しない理由としては「登録しないほうがメリットが大きいと思うから」が32.4%でもっとも高く、「業務負担が増えるから」が26.8%、「対応できる人材がいないから」が18.1%となっており、人材の問題を挙げているところが意外と多かった。

ちなみに、仕入先が適格請求書発行事業者ではない場合どのように対応するかとの問いには、「これまで通り取引を継続する」が45.6%と半数近くだったものの、「取引条件の変更を相談する」が18.6%と2割近い結果となり、やはり少なからず取引への影響が発生する可能性はあるようだ。

出典:エヌエヌ生命保険「全国の中小企業経営者のインボイス制度に関する意識調査」より

文=飯島範久

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