今回のゲストは、住宅関連事業および脱炭素事業を手掛けるエプコの佐藤すみれ氏。経営企画部と人事部、二足の草鞋を履き、同社の人的資本経営推進に日々取り組む佐藤氏に、進捗や課題、今後に向けた思いを語ってもらった。
二足の草鞋で体現する会社のメッセージ
今回のゲストである佐藤氏がエプコに入社したのは2016年。入社8年目、まだ若手といっていい世代だが、経験は豊富だ。入社直後に、関連会社のエネルギーベンチャーに3年間出向。帰任後は経営企画部で広報・IRを担当し、2023年3月からは人事部を兼務している。そんな佐藤氏の自己紹介を受け、堀尾も谷本氏も驚きを隠さない。佐藤氏は経営企画部と人事部を兼務しているというが、堀尾曰く経営は「右脳派で定性的」、人事は「左脳派で定量的」と言われることが多く、それぞれの役割も違う。
「人的資本経営という切り口で考えれば、確かに経営と人事は切っても切れない関係です。でも、これまで上場企業も含め様々な組織を見てきて、佐藤さんにお会いするまで、両部署を兼務している例は見たことがありませんでした」と堀尾。
兼務の経緯について、佐藤氏はこう語る。
「会社が、経営と人事の連携強化を模索し始めたのが3年ほど前。そのきっかけになったのが、2020年9月に経済産業省が公表した『人材版伊藤レポート』です。経営企画部も人事部もこれに衝撃を受け、本腰を入れて人的資本経営に取り組むようになりました」(佐藤氏)
同レポートは、一橋大学名誉教授の伊藤邦雄氏が中心となり、経営戦略と連動した人材戦略をどう実践するかを取りまとめた報告書で、2022年5月には『人材版伊藤レポート2.0』も公表されている。驚くべきは、エプコの対応の速さだ。
「確かに『人材版伊藤レポート』の発行によって、経営戦略と人材戦略の連動を経営マターにしていかなければならないという認識は企業に広まりましたが、すぐにアクションに落とせたケースはほとんどなかったのではないでしょうか」(谷本氏)
佐藤氏が実際に人事部と兼務し始めたのは2023年3月だが、佐藤氏自身、すでに2020年から経営企画部に所属しながら、会社の命を受けて人事関連の外部研修を受けていたという。
「私に兼務させることを決めた会社の意図としては、経営戦略と人事戦略を連携させ、人的資本経営を前に進めていくというメッセージを、私を通して全社的に発信したかったのではないかと思います。また私自身、これまで決算資料などを外部の投資家などに向けて開示する立場でしたし、中長期的な経営の方向性も把握できています。この理解を踏まえ、人事を通して経営戦略を現場の施策に落とし込んでいく仕事は、大変意義深くやりがいも感じています」(佐藤氏)