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2023.08.20 10:30

途上国のAIプロジェクトに総額7億円 ゲイツ財団が授与

遠藤宗生
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Getty Images

ビル&メリンダ・ゲイツ財団は9日、大規模言語モデル(LLM)を活用した人工知能(AI)を用いて低・中所得国が抱える課題の解決を目指す試みを支援するため、総額500万ドル(約7億2500万円)を48のスタートアップや研究者に授与すると発表した。

10万ドルが授与される支援対象者の中には、パキスタンの医療従事者が電子カルテを作成・管理するためのChatGPTベースのチャットボットを開発中の研究者や、ケニアの学生向けの高度なAI家庭教師ツールを開発する起業家などが含まれている。

その大半は、HIVや妊婦のケアなどのヘルスケア分野で生成AIを活用しようとしているが、それ以外の分野にフォーカスしている対象者もいる。例えば、ウガンダの科学者グループは、ChatGPTベースのアプリを構築し、農家に作物の病気に関する情報を提供しようとしている。

ベトナムの研究者は、GPT-4をベトナム語向けに微調整することで、塩水の被害を受けた地域の住民にアドバイスを提供するチャットボットを作成しようとしている。ブラジルのある非営利団体は、ジェンダーに基づく暴力を受けた女性を支援する心理学者や弁護士向けのチャットボットを開発しようとしている。

大手AI企業の大半は「グローバル・ノース」と呼ばれる北半球の先進国にあるが、ゲイツ財団は、より多くの人々がこのテクノロジーの恩恵を受けられるよう、低・中所得国での生成AIの開発を活性化させようとしている。

同財団AI安全委員会のメンバーであるケニアのコンピューター科学者ジュリアナ・ロティッチ(Juliana Rotich)は、「テクノロジーの進歩がもたらす利益は、差別や不平等によって世界の多くの地域で不均等な結果になることがあまりにも多い。裕福な国々で開発されているツールのほとんどは、貧しい地域の誤ったデータを学習している場合が多い」と述べている。

ゲイツ財団は今回、103カ国の研究者や非営利団体、民間企業から提出された約1300件の提案を審査し、支援対象を決定した。この新たなプログラムを通じて、AIが低所得者層のコミュニティでどのような役割を果たせるかを見きわめ、生成AIの使用のモデルケースを構築したいと考えている。

forbes.com 原文

編集=上田裕資

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