簡単に言うと、BMSは、各自動車メーカーが新車や未来を謳うコンセプトカーを発表するような巨大なイベントではない。たとえれば、プロ野球と社会人野球の違いのような。ここはもっと現実的で、もっとローカルで、クルマのパフォーマンスと人との対話で観客をエンターテインするショーなのだ。
ロンドンから1時間ほどのファーンボロという空港に隣接する、エキシビション会場で開催されるBMSは、自動車メーカーではなく、クルマを扱う有力ディーラーのブースがほとんどだし、野外の2つのライブ・イベントエリアでは、世界的に有名なイギリス式のモータースポーツを祝福するショーこそが目玉になっている。
例えば、英国空軍による飛行機からパラシュートで6人が降下するショーや、イギリスで最も有名なスタントマンのポール・スイフト率いるドライバー・チームが朝から晩まで、野外コースでクルマのスタント、またはドリフト・パフォーマンスを繰り広げていた。スイフト氏は7歳から乗り物に夢中になっており、2輪走行などのスタント記録でギネスブックにも載っているほどの天才ドライバー。だからこそ、観客の中では注目度が非常に高い。
クルマのライブのイベントもたくさんあるけど、当然、メーカーの存在感を主張する展示もある。
例えば、世界最優秀車賞「ベスト・カーズ・オブ・ザ・イヤー」のブースの中に、何気なくホンダの電気自動車第2弾である「Honda e:Ny1」がイギリスでのデビューを果たした。412kmの航続距離をもつ同車は、実は今年5月に発表されているけど、欧州向け専用車なので日本ではほとんど話題になっていない。何で欧州専用車なのかわからないけどね。日本でも売れそうなのに。さらにホンダのプレゼンスを強化するために、「マーシャル」というホンダ・ディーラーのブースでは、初代NSXとS800と最新型のハイブリッドSUV「ZR-V」も展示されていた。
しかし、一番パワーを感じたのは、やはり中国のBYDという巨大EVメーカー。日本でも発表されたアットー3も展示されていたけど、これから日本でも話題になる「シール」も展示された。テスラに次いで世界第2のEVメーカーであるBYDは、年間91万台強のEVを生産している。今年の秋からいよいよイギリスで大きく展開する同ブランド。そのブースで音楽をセレクトしていたDJが使う電力は、BYDアットー3から引いていた。