2023.08.20 15:00

米国人の海外渡航、コロナ前の水準に回復 人気の旅先は?

shutterstock.com

今年1~7月に米国を出国した米国人の数が4000万人に達し、ついに新型コロナウイルス流行以前の水準を超えたことが、米国際貿易局の最新データから明らかになった。旅先としては、ビーチリゾートで長年にわたり人気だったメキシコの割合が減り、代わりにカリブ海諸国が増加。アフリカ、中東、南米もわずかながら増えている。

1~7月の海外渡航者数は、コロナ前の2019年と比べて8.6%増加。国別では、英国(300万人)、フランス(150万人)、ドイツ(160万人)といった欧州諸国が依然として人気となっている。欧州に渡航した人は計1170万人で、全体の29.1%を占めた。

カンクン、プエルトバジャルタ、カボサンルカスといったビーチリゾートで有名なメキシコへの渡航者は830万人で、2022年の同時期から6%増加したが、全体に占める割合は減少。一方、バハマ、アンティグア、ケイマン諸島といったカリブ海諸国への渡航は20.3%の大幅増となった。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、メキシコで13のホテルを運営するプラヤ・ホテル&リゾートのライアン・ハイメル最高財務責任者(CFO)は、最近の決算説明会で、観光客の間でメキシコへの「旅行疲れ」が起きており、欧州やカリブ海などに比べると需要が減少していると述べている。

中東への渡航者は220万人と比較的少なかったが、それでも2019年同期比で46.1%の大幅増となった。背景には、2010年以降観光事業に2200億ドル(約32兆円)を投じ、2022年にはFIFAワールドカップを開催したカタール(49万4000人、2019年同期比92%増)、ユダヤ教徒やキリスト教徒の聖地巡礼を目的とした宗教観光が多いイスラエル(44万2000人、36.2%増)、トルコ(56万人、81.1%増)といった国々の存在がある。

英語圏の主要国への渡航者は、オーストラリアが2019年同期比で33.7%減、カナダが同16.1%減、ニュージーランドが同14.1%減と、軒並み減少している。

(編集者追記:アジア全体への渡航者数はコロナ前の水準まで回復していないものの、日本への渡航者は2019年同期比17.6%増の約120万人だった)

ただし、このデータは米国からの直行便に限定されており、第三国を経由する海外旅行者の存在により偏りが生じている可能性がある。特に、中東や欧州の大手航空会社の多くは、第三国を経由するフライトを多数運航している。

一方、外国人観光客の米国渡航はコロナ前の水準には戻っていない。外国人訪問者の数は今年1~7月が3020万人だったのに対し、2019年同期には3770万人だった。ただ、米国への外国人観光客はコロナ前からすでに減少傾向にあった(2017年1~7月の外国人観光客は4100万人だった)。

専門家はその理由として、さまざまな要因を挙げている。国際人権団体アムネスティ・インターナショナルは2019年、銃による暴力事件の多発を理由に、米国への渡航警告を出した。一部の専門家は、トランプ政権が多くの人の訪米を躊躇させたと指摘。米国旅行協会は2019年の報告書で、「継続する世界経済の冷え込み、貿易摩擦の長期化と拡大、トランプ政権を取り巻く不確実性は、依然として海外旅行者にとって大きなリスクとなっている」と述べている。

forbes.com 原文

翻訳=上西雄太・編集=遠藤宗生

タグ:

ForbesBrandVoice

人気記事