全米経済研究所(NBER)が最近発表した研究は、厳格なRTOを支持しているようだ。ランダム化比較試験を採用した本研究によれば、自宅で仕事をする労働者は、オフィス環境で同じ仕事をする労働者よりも生産性が18%低かった。この研究結果は「リモートワーク革命」を崩壊させるという意見もある。
しかし、NBERの研究はインドのチェンナイで下層階級の労働者を対象にデータ入力作業の生産性を測定したもので、WFHのパンドラの箱を開けたパンデミックよりずっと前の2017年に実施されたものだ。パンデミック後の米国を拠点とする金融サービス企業やハイテク企業などに、これらの調査結果を一般化するのは賢明ではないだろう。
さらに、パンデミック中やパンデミック後に実施されたものも含め、生産性へのマイナスの影響がわずかである、あるいは生産性にプラスの影響さえあるという研究結果もある。
しかし、これらの研究の妥当性や適用可能性にかかわらず、従業員の生産性だけに注目すると、RTO戦略を設計する際に考慮すべき多くの要因を見逃してしまう。