経済・社会

2023.08.17 16:30

ハワイ・マウイ島の山火事で「命を救った」iPhoneのある機能

さらに、アップル公式ウェブサイトでは次のような説明が続く。
 
「衛星通信で接続する場合、携帯電話の電波でメッセージを送受信する場合とは勝手が違います。空への視界が開けていて、水平線が見えるような理想的な条件下では、15秒ほどでメッセージが送信されますが、さほど葉が茂っていなくても樹木の下では1分以上かかる場合があります。
 
葉が密に茂った樹木の下やその他の障害物に囲まれている場所では、衛星に接続できない可能性もあります。周囲の環境やメッセージの長さ、衛星ネットワークの状態や提供状況によっても、接続時間は左右されます」
 
つまり、電波が通じなくとも、緊急時には衛星を介して連絡が取れる。

衛星通信時の画面。iPhoneで緊急SOSを発信し、衛星通信で接続された時の携帯画面。デモ画面で事前に確認することもできる

iPhoneで緊急SOSを発信し、衛星通信で接続された時の携帯画面。デモ画面で事前に確認することもできる


こんな機能がiPhoneには標準装備されていたのである。ただし、緊急SOSの衛星通信を利用して、携帯電話やWi-Fiの電波が届かないところでも緊急通報サービスにテキストを発信できるのは、iPhone 14とiPhone 14 Proモデルに限られるようだ。さらに、「探す」Appを使って、自分の位置情報を衛星通信でほかの人に知らせることもできる。
 
前述の投稿をしたMiraflorさんによれば、消防署と通信指令員に衛星通信経由で家族の位置情報を共有し、危険にさらされている自分たちの周囲の状況を伝えることで、救助につながったという。Miraflorさんは投稿のなかで「緊急SOS機能のおかげで家族は30分ほどで安全に避難できた」とも述べている。家族は火災現場近くのラハイナのショッピングモール「アウトレット・オブ・マウイ」で発見されたそうだ。

衛星通信経由の緊急SOSには注意点も

このiPhoneの緊急SOS機能は、2022年11月に初めてリリースされ、公式ウェブサイトによると、ユーザーが緊急電話「SOS」を発信すると、iPhoneが自動的に最寄りの緊急電話番号に電話し、位置情報が救急サービスと共有される仕組み。通話終了後にテキストメッセージを受ける緊急連絡先を追加することもできる。すでに述べたように衛星経由での送信機能はiPhone 14になって追加された。
 
実は、今年5月にも、カリフォルニア州のサンタ・ポーラで携帯電話の電波が届かず道に迷った10人のハイカーが緊急SOS機能のおかげで救出されたというニュースがあった。連絡を受けた地元警察が捜索救助チームを手配し、位置情報により所在が発見され、安全に連れ戻されたそうだ。
 
ただし、この衛星通信経由の緊急SOSには注意点もある。公式ウェブサイトの説明によれば、「iPhone 14またはiPhone 14 Proのアクティベーション後2年間は無料で利用できます」とあり、また設定で「衛星通信接続」に対して位置情報サービスを有効にしておくことと、携帯電話やWi-Fiの電波が届かない可能性がある場所に出かける場合は「衛星経由の緊急SOSがどのように機能するのかデモで試して学習しておくこと」が推奨されている。

文=岩瀬英介

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