パクソスの戦略責任者であるウォルター・ヘセット(Walter Hessert)は、8月7日に行われたコインデスクとのインタビューの中で、大手のテック企業や金融サービス会社と協議中であることを明らかにした。中には、ホワイトラベルでのステーブルコインの発行を検討している企業もあるという。彼は企業名を明かさなかったが「エキサイティングな企業がPayPalの後に続くと考えている」と述べている。
「法律や適切なガードレールが整備されれば、大手銀行は市場流動性を高める他の金融商品と同じようにステーブルコインを取り扱うようになるだろう」とモフェットネイサンソンのアナリストであるリサ・エリス(Lisa Ellis)は話す。
ステーブルコインとは、法定通貨(多くの場合は米ドル)などを裏づけ資産とするデジタルアセットで、テザー(USDT)とUSDコイン(USDC)の2つが独占的なシェアを保有している。
パクソスにとって、PayPalによる独自ステーブルコインの発行は、ホワイトラベルサービスの再開を意味する。同社は、2月にニューヨーク州の規制当局から第3位のステーブルコインであるバイナンスUSD(BUSD)の鋳造を停止するよう命じられた。規制当局はその理由として「バイナンスとの関係に関して、パクソスの監督にいくつかの未解決の問題がある」としていた。世界最大の暗号資産取引所であるバイナンスは、証券取引委員会と商品先物取引委員会とも衝突しており、両委員会から訴えられている。
ステーブルコインは儲かる
米ドルに裏づけられたトークンに対するニーズが切迫しているわけではないかもしれないが、ステーブルコインビジネスは保守的に運営すれば儲かる可能性がある。USDTを発行するテザーは、不透明な財務報告にも関わらず、時価総額830億ドルのトークンの裏づけ資産から得ている利息収入により、第1四半期と第2四半期にそれぞれ10億ドルを超える利益を得たと発表している。USDCの発行元で、時価総額がテザーに次ぐ260億ドルのサークルは、昨年のIPO計画を撤回して以降、財務数値を発表していないが、同社の裏づけ資産に基づくと、今年の総収入は20億ドルに達する可能性がある。
PayPalの株価は、5月に6年ぶりの安値をつけ、今年に入ってから12.9%下落している。PayPalでブロックチェーン、暗号資産、デジタル通貨担当のシニアバイスプレジデント兼ゼネラルマネジャーを務めるホセ・フェルナンデス・ダ・ポンテ(Jose Fernandez da Ponte)は、ブルームバーグとのインタビューで次のように述べた。「我々は、決済企業として決済向けデジタルトークンの普及を促進し、裏づけ資産からの利息収入以外にも複数のマネタイズ方法を模索していきたい」
PayPalによるステーブルコイン発行の発表は、米議会がステーブルコインの連邦規制枠組みを策定する法案を検討している最中に行われた。
(forbes.com 原文)