ここで彼女は「作品を伝統的な方法で出版したいという強い思いに変わりはないけれど、私がどうしたいかとは別に事情もあるし、契約のこともあるので」と書いている。どんな事情、契約が彼女をGalateaに引き留めるのか、興味深いところではある。
日本上陸について同社エマ・トナー氏に聞いた
そのInkittが本社をベルリンからサンフランシスコに移転すると同時に、LinkedInなどを通じて、日本の「シニア・マーケティング・マネジャー」と「コンテント・アンド・ローカライゼーションマネジャー」を「積極的に採用中」とアナウンスしている(シニア・マーケティング・マネジャーのポジションはすでに決定、8月21日に着任したという:8月23日情報更新)。同社チーフ・インターナショナライゼーション・オフィサーのエマ・トナー(Emma Tonner)氏に、日本でのローンチ計画についてインタビューしてみた。以下がトナー氏からの回答である。
──日本上陸はいつを計画しているか?
今年10月〜年内には日本の読者にわれわれのコンテンツを紹介する計画で、その土台作りをすでに開始している。
──なぜ日本を次の市場に選んだのか?
この1年間、Galateaを多言語展開すべく、既存コンテンツの翻訳を進めてきた。そして書籍の世界市場を調査するうちに、日本における電子書籍市場の大きさ、とくに質の高いエンターテイメントやロマンス文学への強い興味を知った。Galateaが豊富に持つTL(ティーンズ・ラブ)小説やライトノベルが、日本の多くの読者に愛されることを確信している。
──初年度はどれくらいの規模のビジネスを計画しているか?
初年度で200万人の読者を獲得できると予測している。最初の数カ月はまず、世界の作家たちが書いた既存のトップ・コンテンツを楽しんでもらいたい。そして2024年からはInkittに日本人作家を呼び込み、日本オリジナルのコンテンツも充実させていく予定だ。
──日本ではどのジャンルに注力していく予定か。ビジネス書など、小説以外も考えているか?
われわれの出版はすべて、Inkittでの読者の行動分析に基づいて行っている。あくまでも「読者が愛するもの」をGalateaで出版する、そのモデルを徹底していく。
トナー氏は、「今のところは物理的な書籍の出版計画はない」と話しているが、将来、日本特有の「取次」「再販制」の仕組みは彼らにとっての障壁になるのか。そして、編集者の「勘」や「センス」を科学は本当に凌駕し得るのか──。興味は尽きない。