柳田晃嗣氏。アップル、グーグル、そしてアマゾンと、いわゆる「GAFA」を経験してからみずほへ転籍。金融業界は初経験だが、この10月には担当部署が、CRM協議会が表彰する「2023 CRMベストプラクティス賞」の「大星賞」(同協議会名誉会長、NTTドコモ元社長・会長 大星公二氏の名を冠した賞で、モバイルテクノロジーを使ったCCRM事例に与えられる)を受賞した。
柳田氏はアップルでオンラインチームを率いた後、グーグル ジャパンでオンラインパートナーシップグループ本部長を務め、2013年にはアマゾン ジャパンに入社。モバイルショッピング事業本部の立ち上げやアレクサビジネス本部の運営を本部長として率いる。2020年6月にみずほフィナンシャルグループに入社、2021年7月、リテール・事業法人カンパニー 副カンパニー長に就任した。4月からは副CDOも兼務だ。
実は柳田氏は、米国オースティンのテキサス大学で天文学学士号を得ている。
プライベートでも、ある人物の意思を継いだ天文台(都心から数時間)での観測活動を準備中という柳田氏に、DXのアプローチと天文学の意外な共通点についてリモートで話を聞いた。
ラボ、実験室の中では、天文学の理論を検証する環境は作れない
天文学の分野には、大きく分けて3種類の研究者がいます。スティーヴン・ホーキング博士などに代表される「セオリー」を扱う理論天文学者、そして理論を証明する「オブザベーション」を専門とする観測天文学者、さらに、観測するためのインストルメントを作る観測機器天文学者です。こうした天文学者が一つ一つレンガを積み上げるように宇宙の(我々も含まれますが)謎を解き明かしていく。──ある意味、天文学は物理学の中でもとても特殊な学問なんです。
なぜなら物理学ではふつう、研究室の中で実験環境を整え「擬似環境」を作りそこで実験をします。ですが、天文学はなにせ研究対象が大きく遠い。基本的に大気圏外にありますから、ラボ、実験室の中では環境が作れないんですね。
ですから、宇宙にある物質を地上から「観測」し記録に残し、注意深くそのデータを解析して理論を検証していくしかありません。
しかし、空を仰ぎ見て観えてくる様々な星々は、地球からの距離も、それぞれ発光の原理(メカニズム)も様々。数千億年前の光がやっと地球に届くその横に数年前の星の輝きも同時に入ってくるわけです。これが見かけ上、地球から映る星空です。
そして、厚い大気に覆われる地球上で見る星空は、さらに「天文学的な」距離も加わり、鮮明には見えない。さらに対象も、撮影場所である地球も時間と空間を変化し、動いているわけです。