欧州

2023.08.18 08:30

ウクライナ侵攻終結させるにはロシアの石油・ガス収入を遮断せよ

ロシア・サンクトペテルブルクで先月30日に開かれた海軍の日のパレードで、セルゲイ・ショイグ国防相(右から2人目)と会話するウラジーミル・プーチン大統領(中央、Getty Images)

ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領は、自身の背中に代償を負っているかもしれない。それでも同大統領やウクライナ、つまり自由と西欧化を求める国の決意が揺らぐことはない。ゼレンスキーは以前、宿敵であるロシアのウラジーミル・プーチン大統領に、あと10年は生き残れないだろうと言い渡していた。

だが、両国の紛争を早急に終結させるには、ロシアの資金源を断ち、同国が略奪した富を没収することが鍵となる。実際、ロシアは石油や天然ガスを世界中に輸出して、1日当たり5億~10億ドル(約730億~1500億円)もの収入を得ており、ウクライナ侵攻の資金源にしている。世界がロシア産天然資源の購入を停止すれば、軍事侵攻は終結し、計り知れない死と殺りくを防ぐことができるだろう。

英国のBPやシェル、米エクソンモービル、ノルウェーのエクイノールをはじめとする欧米の大手石油企業はすでにロシアから撤退している。その上で、国際社会は現在凍結されているロシアの資産を差し押さえ、その資金をウクライナの復興支援に充てるべきだ。

ロシア市場に特化した資産運用会社のエルミタージュ・キャピタルマネジメントの創設者であるビル・ブラウダーは、ロシアがウクライナに与えた損害の規模を1兆ドル(約146兆円)と試算。「開戦以降、西側諸国は3500億ドル(約51兆円)に上るロシア中央銀行の準備金を凍結した。明らかにやるべきことは、その資金を凍結して没収することだ。これは道義的にも、財政的にも、また政治的にも正しいことだ」と述べた。

米国のドナルド・トランプ前大統領と顧問弁護士のルドルフ・ジュリアーニが、当時のジョー・バイデン前副大統領に対する犯罪捜査を開始したと発表するようウクライナに「依頼した」というニュースが流れた2019年9月、筆者はウクライナにいた。これによりトランプは弾劾されたが、渦中のゼレンスキーはひるむことがなかった。

トランプとジュリアーニがゼレンスキーを力で操ろうと考えたように、プーチンも同じ罠にはまった。元喜劇俳優のゼレンスキーは、ロシアが軍事侵攻を開始した時点で逃げ出すこともできた。ところが、プーチンが地下壕に身を潜めている間に、ゼレンスキーは国際政治家として堂々と立っていた。ウクライナは今、世界からの財政支援と軍事支援によって完全に勝利する可能性がある。

そして現在、プーチンは国際刑事裁判所からの逮捕状やクーデター未遂、首都モスクワのビジネス街を攻撃する無人航空機など、さまざまな要因によって衰勢に向かっており、ウクライナ国民に対する攻撃を強めている。プーチンはロシア国内外で指名手配犯となり、もはや一国の絶対的権力者として恐れられることも、見なされることもないだろう。プーチンは今月末、いわゆる新興5カ国(BRICS)首脳会議のために南アフリカを訪問する予定だったが、逮捕を恐れ、代理人を派遣することを決めた。プーチンは現在、孤立しており、北朝鮮に接近しようとしている。

先述のブラウダーは次のように語った。「プーチンは信じられないほど恐れを抱いており、リスクを取ろうとしない。これまでは厚かましく攻撃的な男で、殺人を犯しても逃げ回ってきた。ところが突然、旅行ができなくなった。これは自身の威信にかかわることだ。プーチンは国内でも弱々しく見える」
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翻訳・編集=安藤清香

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