UNDER 30

2023.08.23

点と点はいずれつながる。山田早輝子が語るジェネラリストの世界

山田早輝子(写真=小田駿一)

「スペシャリストが重んじられる日本では、ただの怪しい人ですよね」

自らの存在をそう語る山田早輝子は、日本ガストロノミー学会代表、世界ベストレストラン50公式大使、フードロスバンク社長など、「食」にまつわる肩書きを多数持ちながら、フードロスの解決や観光開発に邁進する女性リーダーだ。

キャリアの転機となったのは、20代前半にカリフォルニアに渡ったこと。短期間の語学留学のつもりが、現地でチャリティ活動や映画プロデュースを手掛けるようになり、実業家や富豪、俳優など華やかな人脈も得た。

ユニークなバックグラウンドを生かし、現在は行政、国際機関、ハイブランドなどと組みながら、日本の食のプレゼンスをあげる活動をしている。Forbes JAPANでは、今年の「30 UNDER 30」のアドバイザリーボードを依頼。インタビューで、自身の「U30時代」の経験といまの20代へのメッセージを聞いた。

目標を決めなかったらから今がある

幼い頃から「既存の概念にとらわれたくない」という漠然とした思いがあって。子供の頃から空気を読まないというか、何でも真正面から質問して、先生がたじろいでしまうような生徒でした(笑)。自分が納得できないままにしておくことが嫌だったんでしょうね。

実はいろいろな選択肢があるかもしれないのに……という思いはその後も持ち続けていて、大学卒業後は新卒で総合商社に入ったのですが、24歳のとき辞職してアメリカに渡りました。特に明確なゴールを定めていたわけではなく、まずは語学からと渡米を決めました。

取材でよく「目標はありますか?」と聞かれますが、「絶対にこう!」とは定めたことがなくて。でも、私はそれがすごく良かったなと思っています。もし、何か資格を取って、帰国後のキャリアアップを目指すというような目的があったら、今の自分はないはず。阿吽の呼吸が成り立つ日本から出て、多様な価値が共存する世界で視野が広がり、結局、アメリカに1年のつもりが、十数年間海外で暮らすことになりました。

アメリカでは、ヴァージン・グループ会長のリチャード・ブランソンとチャリティ活動をしたり、俳優のショーン・ペンとハイチ大震災の復興支援を行ったり、映画のプロデュース会社を立ち上げたり。ハリウッドらしい話ですが、どれもすぐに実現したものではなく、数年にわたる交流のなかで信頼を得て、仕事を依頼されるようになりました。

コミュニケーションで気をつけていたことはあります。それは日本人としてのアイデンティティを大切にすること。「郷に行っては郷に従え」という諺を英語では「When in Rome, do as Romans do」と言いますが、ローマ人がするようにはしてもローマ人になろうとしないことが大事だと思っていました。日本人って真面目で、時間や約束をしっかり守る文化が根付いていますよね。その点は特にアメリカナイズされないように心がけました。

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文=国府田 淳 写真=小田駿一 編集=鈴木奈央

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