アオイヤマダ、23歳。東京五輪・閉会式でのパフォーマンス、あるいは、昨冬に大ヒットしたNetflixのドラマ「FirstLove 初恋」の古森 詩(こもりうた)役を記憶している人も多いのではないだろうか。最近では、映画『PERFECT DAYS』の公式上映でカンヌ国際映画祭のレッドカーペットを歩き、世界から注目を集めた。
「下に行くと、上が見える」
アーティスト、俳優、モデル……複数の顔を持ちながら、「いまのところ自分では“表現者”と言うことが多いですね」と話すヤマダだが、その原点はダンスにある。幼少期に、言葉は伝わりづらい、誤解されやすいと感じたトラウマがあり、よりダイレクトに表現できるダンスに「逃げるように、しがみつくように」没頭していった。地元のダンススクールに通い、15歳で上京してダンス専門の高校に進学。バレエ、ヒップホップ、ジャズなどダンスの種類もさることながら、山口小夜子やダムタイプなど、それまで知らなかったパフォーマンスのバリエーションを知り、「自分がやってきたダンスはこんなに広がりがあり、それが文化になっている」と感動した。
その才能は早々に注目され、在学中に数々のミュージックビデオやCM出演を果たしていく。そしてその過程で、転機となる挫折を経験する。
「あるミュージックビデオで、普段ダンスをしない人と共演したとき、その人の踊りに物語が見えたんです。私は踊ることに慣れていたけれど、ダンスの上手い下手は関係なく、身体で物語を紡げるんだ、と。自分の限界を感じて、撮影中に号泣しました」
ひどく落ち込むも、そこで「自分の伸びしろも感じた」というところにヤマダの強さがある。当時を振り返って、「下に行くと、上が見える」と、冷静に語る。
もう一つのターニングポイントは、2020年の東京五輪でのパフォーマンスだ。全世界の人々が見る、これまでにない大舞台に出て、賛否両論、落ち込む言葉もたくさん浴びた。「やっぱり、みんなにわかってもらう表現は難しい」。そこから、一層深く、自分の表現と深く向き合うようになった。
「追悼というテーマで踊ることになって、自分なりにたくさん考えました。それは亡くなった人のためなのか? 生きている人にこそ必要なのか? 考えすぎて、何をすべきなのか分からなくなる。いや、待てよ? 私の身体表現は言葉を超越するもののはずなのに、なぜそこで苦しくなるのか……」