「京都で座禅を組んだときに、お坊さんから『人は常に変わっているから、ゼロに戻すのもストレスですよ』と言われて、ハッとしました。日々違って感じるのは、不調ではなく、身体が外に順応していることなのかと」。新しい知識は拒否せず、耳を傾けるタイプだ。
また、自分の外側、内側という順に意識を向け、外と内を融合させるというステップで行われたその座禅の経験は、ヤマダの表現者としてのあり方にも示唆を与えるものだった。
「これまで、表現するには自分を掘り下げることが大事だと思ってきたけれど、あるとき、出し切って、自分の中がからっぽと気づくことがあったんです。周りがあってこそ生まれるものだな、と。体力がいるけれど、やっぱり外から得ていかなければいけないですね」
ダンスも芝居も、弁当づくりもひとつの表現として楽しむなか、目下の関心は、「自分を実験台に、どこまでいろんな人と混ざっていけるか」にある。監督業をして、自分の目線で世界を切り取ってみたいという思いもあれば、身体や皮膚と表現の関係を追求したい思いもある。ただ、ゴールは特に定めていない。
それでは、そうして生み出す表現で、何を伝えていきたいのか。聞くと、曖昧で、余白と可能性に満ちた答えが返ってきた。
「世界の人が生きる喜びを感じてくれたら。それに尽きる。つまり、それってすごく未知数。でも、そういうことなのかな」
アオイヤマダ◎2000年生まれ。15歳で上京し、90年代を起源とする東京のファッションシーンに出会い、影響を受ける。東京オリンピック閉会式にソロ出演。Netflixシリーズ「First Love 初恋」や2023年公開の映画『PERFECT DAYS』、『唄う六人の女』などに俳優として出演。