アート

2023.08.24 12:00

アオイヤマダ、23歳 「言葉を超越する身体表現」への挑戦

言葉と身体表現、その間で揺れながら、「では、自分の表現は社会に何ができるのか」と考える日々。アーティストと話す機会が増えるにつれ、「パフォーマンスやアートは思いもしなかった気づきを与えてくれるもの」という思いが強くなっていった。これは、昨今のビジネスシーンで言われる“アートは問いを与えるもの”という定義にも近いだろう。

論理や言語に落とし込もうとせず、考えすぎないからこそ得られるもの。人間が情報の80%以上を視覚から得ていると言われるなかで、ヤマダは皮膚や身体の感覚にもっと可能性があるのではないかと感じている。

「生きていると、人は何かしらの型のようなものに縛られてしまうけれど、踊ると身の回りにあるそれらが壊れて、ただの空気になる感じがあるんです。地位やジェンダーも消え去って、生命だけが動き出すような。こういうダンスと皮膚感覚を繋いだ先に何かがある気がしています」
写真=帆足宗洋(AVGVST)

写真=帆足宗洋(AVGVST)

「何かと何かをつなぐ」関節として

その好奇心や探究心は、ヤマダを次なる舞台に引き寄せた。Netflixのドラマ「FirstLove 初恋」への出演だ。きっかけは、ヤマダが居候をしていた料理家の家に、主演俳優の満島ひかりがよく訪れていたという偶然だった。

オファーを受け、不安を抱えながらも演じきると、「お芝居もすごく好き」な自分に気づいた。以降、ドラマを観てアオイヤマダを知り、その表現に興味を持った人が別の作品を見るというような連鎖も生まれている。

「例えばメディアアートのダムタイプの作品など、人気ドラマとはかけ離れた要素が私を通して交差していく。それがやりたいことだなと実感しました。何もないところには、何も生まれてないと思っていて。何かと何かがあって、それが重なるところで新しいものが生まれ、時代が更新されていく。その何かをつなぐ“関節”になることに、今は使命感を感じています」

好きな銭湯に行きにくくなるなど、多くの人に知られることは当初ストレスでもあったが、認知の高まりも徐々に受け入れている。長野県松本市が地元であるヤマダは「この前、松本に行きました」と声をかけられることも、ある意味“関節”になれているエピソードで、「私と地元松本市を繋げて考えてくれていることが嬉しい」と微笑む。
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文=鈴木奈央

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