ライフスタイル

2023.08.18 18:00

譲り受けた眼鏡で視野の広さを得る

FRED「ALASKA」(上)「RODENSTOCK」(下)

贈り、贈られたモノや体験は、人生を変えるほどの力を持つことがある。企業のトップ、リーダーたちが経験した、モノや体験に介在する特別な思い入れを紹介する。自身の生き方、サクセスストーリーにも影響を及ぼしたであろう「GIFT」の逸話には人間味あふれる姿がある。希薄化も言われる現代の人間関係とは異なる、特別な関係だ。


THE GIFT #2

奥本清孝

乃村工藝社 代表取締役 社長執行役員
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FRED「ALASKA」「RODENSTOCK」
型番の印字が消えているのは山本さんが生前愛用していた証し。
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私は日ごろ、領域を問わずさまざまな文化や芸術、体験に触れることを心がけている。見識を深め、広い視野をもつ。その大切さを教えてくれたのが、昭和を代表する実業家で「ビール王」「ホテル王」と呼ばれた山本為三郎さんのご子孫であり、アサヒグループ財団の常任理事を務めていた故・山本為久さんだ。

為久さんとは仕事を通じて知り合い、食事をしたり自宅に招いてくださったりなど大変懇意にしていただいた。歴史やビジネス、芸術・文化、政治などさまざまな領域に精通し、それらの話題をユーモアを交えお話しくださるので、お会いするのを毎回楽しみにしていたことが思い出される。

この眼鏡は、為久さんの奥さま、尚子さんから「よろしければ使ってやってください」と形見分けしていただいたものだ。ブランドは異なるが、シンプルで細部にまで気品のあるつくりだ。シルバーは会社で、ゴールドは自宅で、執務に集中したいときに愛用している。

この眼鏡をかけると、不思議といつもの自分より視野が広くなるような気がするからだ。常に穏やかで冷静に社会をとらえてきた為久さんの高い視座を得て、経営者として“眼鏡が狂わない判断”を心がけるのである。


おくもと・きよたか◎1965年、兵庫県生まれ。建築会社を経て89年に乃村工藝社入社。94年開港の関西国際空港商業フロアをはじめ、いくつもの大型プロジェクトを手掛けてきた。2016年に取締役、20年に専務取締役、23年より現職。

文=伊藤美玲 イラスト=東海林巨樹

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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