起業家

2023.08.17 18:30

ピボット決断の背中を押した友人の声

福島:経営者って不安なんです。社員の生活や投資家の期待など、いろんなものを背負うなかで取るべきリスクを決断していかないといけない。LayerXでも最初は自信満々に構想を話していたけれど、実は僕の仮説が間違っていて、事業のやり方を大きく変えました。こうした相談をするとき、当事者目線で、「それって必要なリスクだよね」「こう切り替えていけばいいんじゃない」と背中を押してくれる存在は貴重です。

村上:僕はその相談を受けたとき、福島良典という男がさらに進化したんだなと思いましたよ。自分の恥ずかしさやミスを認めたうえで、とことん本質と向き合っているのだと。というのも、もともとLayerXは、ブロックチェーンの領域で、コンサルティング事業をやりながら普遍的なプロダクトをつくる方向で走りだしたんです。実際、非常に順調な立ち上がりでした。福島さんはGunosyを創業2年半で上場させたから、2社目もすごい早さで上場したらまさに偉業。そういった周りの声がちらつくなか、このままの領域・やり方で本当に長期に成長を続けられるのか、プロダクトに落とし込めるのかといったことを見直して大きな決断(ピボット)をした。短期の結果や周りからの見え方にとらわれずに、長期で本当に実現したいことにまい進する姿は印象的で、経営者として触発されました。

福島:確かにつき物が落ちたような、楽な気持ちで経営できるようになりました。振り返ると、LayerXを立ち上げたのは、BtoB領域の人たちをより働きやすくするサービスをつくることが、日本の将来や次の世代に残せる資産だと思ったから。不便で苦しんでいる人が大勢いる経費精算や請求書処理などの仕事をソフトウェアの力で楽にして、ワクワクするものにしていきたい。

村上:よき友人というのは、互いにリスペクトしているからこそ自分のダサいところも見せられる、そして本質的なことを言い合えて共に成長し続けられる関係だと思います。長期で人類と地球に貢献すべく、これからも切磋琢磨していきましょう。


むらかみ・ひろき◎ツクルバ代表取締役CEO。LIFULLを経て2011年にツクルバを共同創業、デザインファームとして経営。15年に方向転換し中古・リノベーション住宅の流通プラットフォーム「カウカモ」を展開。19年に東証マザーズ上場。

ふくしま・よしのり◎LayerX代表取締役CEO。東京大学大学院工学系研究科修了。大学院在学中の2012年11月にGunosyを創業し、およそ2年半で東証マザーズ上場。後に東証一部に市場変更。18年8月にLayerXを設立。

文=眞鍋 武 写真=平岩 亨

この記事は 「Forbes JAPAN 2023年8月号」に掲載されています。 定期購読はこちら >>

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